「うへえ、それはグロいべ」
「もーうちその日夜ご飯全然食べれなかったもん」
「文鳥を飼ってるとショックは大きかったんじゃない?」
「そーなの! うう、アオ〜、思い出すとケーキが喉を通らないよ」
「食べてる食べてる」
こないだ、向島のサークル室であった鳥ちゃんバラバラ事件を新対策委員に任命されている1年生が集まる現場で話すと、みんなうちの心情にある程度の理解を示してくれる。
せっかく先輩たちがうちのことを思って、かどうかは知らないけど見ない方がいいって言ってくれてたのに見ちゃったうちが悪いんだけど、あれは本当に衝撃だった。
「バラバラになった鳥は確かに衝撃だなあ」
「りっちゃん先輩が言うにはネコか何かが食い散らかしたんじゃないかってことだけど、あれは衝撃だったわ……」
「つーかそんなのがあるだなんてやっぱ向島は山だっていう」
「緑ヶ丘だって山の中じゃん!」
そんな話を吐き出させてもらえるこの環境にも感謝。みんなグロ耐性があるのか、それともそういう経験があるのかわからないけど今のところビビりっぷりは野坂先輩が1番。
特にタカティなんて、顔色ひとつ変えずにお昼ご飯代わりだっていうモンブランをつついてる。他のみんなはそれなりにリアクションがあるけど、この人だけはよくわからない。
「て言うかさ、事故って死んだネコとかをカラスがつついてたりもするし、野生動物って喰ったり喰われたりの世界だよね」
「うおっ、高木お前やっと喋ったと思ったらそんな真っ当なコト言いやがるとか」
「確かにね、タカティの言うことには一理ある。野生の動物は常に生きるか死ぬかの瀬戸際だから。特に向島のような山の中だと日常でしょ。それがたまたま人目につくところで行われただけとも言える」
「そうだよねー」
うちのピー子ちゃんはたまたま人に飼われてるってだけで、一歩外へ出れば野生動物たちは毎日生きるか死ぬかの中で暮らしてる。それもまた生き物の生態系なのかもしれない。
そうだよねー、とあの出来事に対する衝撃も少しずつ和らいできた。いろいろな考え方に触れるのは大事だ。今回ばかりはタカティのワケのわからなさにも感謝。
「で、その鳥は結局どうしたんだっていう」
「その日は2年生の先輩たちがみんな遅刻してきて、ペナルティだって言ってりっちゃん先輩が掃除させてたよ」
「さすがりっちゃんさんだべ」
「私も至極真っ当な措置だと思う」
2年生の先輩たちの遅刻癖に関してもエージとアオがバッサリと斬ってくれる。うん、何だかんだりっちゃん先輩と2人で待ちぼうけしてる時間は長かったもんなあ。
そんでもって、ホウキとチリトリを先輩たちに託してから廊下に響いてたじゃんけん大会も結構時間がかかってて、サークルの本題が始まるのはさらに遅かったっていうね!
「あっでも菜月先輩がいたらきっと菜月先輩が掃除してたと思う!」
「奥村先輩ってそういうの大丈夫なの」
「うん、多分。虫とか大丈夫だし菜月先輩だから何でも出来るよ!」
「いや、虫と鳥を一緒にしちゃダメだろっていう」
「奈々のその菜月先輩万能説は何なの? ううん、すごい人だっていうのは私も知ってるけど」
「今から思ったら菜月先輩とりっちゃん先輩のラブ&ピースの時代は最強だったなあMMP……さ、ケーキ食べよっ!」
end.
++++
例の鳥ちょんぱ事件から少し経て、対策委員の現場でのお喋りである。誰かにその衝撃を話したくて仕方なかったものだと思われる。奈々。
同じ話と同じセリフが、メンバーやら状況が変わるとどう話が変わっていくのかという奈々メインの3部構成実験作。
エイジと蒼希はこういうのにも動じないと言うか、それこそ「食物連鎖」とか「ヒエラルキー」とかで納得しそうな雰囲気がある。