今日は向島インターフェイス放送委員会としては久し振りの活動になる春の番組制作会。現対策委員にとっては最後のイベントだし、新しい対策委員も引継ついでに運営を手伝ってくれる。
今回の会場は星大。初心者講習会の時と同じ要領で講義に使う教室をひとつまるまる借り切った。勝手知ったる星大勢がミキサー陣を率いて機材の準備をしていく中、アナウンサーはその他の準備を。
「おらァっ! 機材通るよー!」
「あ、啓子さんここジャマだね」
「そうだね。しかしつばめはいつ見ても勇ましいな」
先陣をきってCDデッキを抱えたつばめが教室に入ってくると、それに続けと他のミキサー陣も行列を作って部屋に入ってくる。やっぱり1年生がいると作業の早さも単純に2倍だ。
機材の組立に関しても、いつもは3人だけど今日はさらにタカちゃん奈々アオわかばにゲンゴローと5人もいる。さすがに8人も要らないとは思うけど、これも1年生には貴重な勉強の場。
「ゲンゴロー、ミキサーなんてなかなか触れないんだから今のうちに触っときな」
「そうですね」
「野坂、組立はなるべく1年生ってかゲンゴローにやらして。あと監督してよね」
「それはいいけど監督はつばめが」
「アタシまだ会場設営で忙しいから」
野坂が1年生の機材組立メンバーを選抜したところで経験豊富だろうとメンバー落ちしたタカちゃんが、次は何をしましょうかとアタシの元へやってくる。
とは言え特にすることもなく、班を割り振るクジを作るくらいで。でもタカちゃんの手先の器用さはこのテのクジを作るのにもきっと向いているかもしれない。小さく紙を切ってもらうことにした。
「あ、そうだ果林先輩」
「なに?」
「後になるとバタバタしそうなので忘れる前に済ませときますね」
そう言ってタカちゃんは一旦ハサミを置き、適当に置かれた対策委員の荷物群の中から自分のカバンを掘り当てた。それを持って戻ってきたタカちゃんが始める本題。
「これなんですけど」
「えっ、かわいい。なにこれ」
「今日ってホワイトデーじゃないですか世間的には。2回もバレンタインありがとうございました」
カバンの中から出てきたかわいい包みがアタシに手渡され、まさか見返りを期待しなかったバレンタインのお返しだと。本当にまさかだよ。確かに高ピー先輩には見返りを求めたけどさ。
「タカちゃん律儀だね、お返しちゃんと用意してくれるとか」
「初めてだったんでどうしたらいいかちょっとわかんなかったですけど」
「上出来上出来、ありがとね」
嬉しいけど、あんまりこんなところでもらった物を長い間眺めてると他の子に何て言われるかわかったモンじゃない。大袈裟に喜ぶことはせずにそそくさと自分のカバンにしまい込む。
タカちゃんを除く1年生ミキサーが野坂監督の下で機材を組み立てる中、サクサクと響くハサミの音。会場も、つばめと1年アナ陣の手によってそれらしくなっていく。1年生との共同作業は最初で最後だ。
「来年の対策委員はミキサーが5人もいれば機材組み立てるのも早そうだね」
「とは言え男が俺とゲンゴローだけなので運搬という意味では大変なのに変わりないですし、その辺はエイジにも手伝ってもらいながらですね」
「今の1年生って男子少ないもんね。ほら、うちらって啓子さんの力で向島勢を動かしてたし」
「相馬先輩のような力を持つ1年もなかなか」
「女子の尻に敷かれそうだねタカちゃん」
「誠意を持って対応します」
怯えながらの誠意はいつかその真意を見抜かれるだろうけど、今いるメンバーでやっていくしかない。何はともあれ、1年生の未来に幸あれ。
「タカティ、やっぱちょっと機材組立手伝って」
「はい、今行きますー」
end.
++++
初心者講習会、じゃなくて春の番組制作会とタカりんホワイトデーをまとめてぶっこんだヤツ。
と言うかその間ヒロは何をやっているのやら。きっと啓子さんと一緒になんかやってるんだろう! リク番用意したりとか……
と言うかつばちゃんと蒼希が揃ってどけどけーって周りを蹴散らす図がナチュラルすぎて、春。