その人が卒業式なんぞに顔を出す性格ではないことは知っている。地上5階、情報センターの窓から黒山の人だかりを見下ろせば、宙に舞う卒業生がちらほらと。
 サークルなどに属さないオレには特別送り出す存在もなく、今日もいつものように解放されている情報センターの自習室スタッフとしてアルバイトをしている。
 こんな日に利用者などあるものかと思いつつ、もしもに備えること。これだけ学生がいれば、1人や2人くらい何かを思い立つ者がおらんとも限らん。

「お疲れさまですー」
「川北」
「ふいー、人が多くて疲れますねー」
「サークルの方はいいのか」
「はい、一段落しました。飲み会は夜からなのでそれまでここでヒマ潰しでもしようかなーと」