「ジャッカジャッカジャジャジャジャーン、ジャッカジャッカジャジャジャジャーン」
「ベッベベッベベベベベーン」
「ジャーン!」
わー、と2人分の歓声と拍手が沸く。星港大学国際学部斉藤ゼミではよくある光景だ。金髪をオールバックにしたグラサン派手シャツギターと、死んだ目・柄シャツベースの流し。
「芹ちゃん、イッセー決まったじゃん!」
「いやー、安定のゲテモノだ」
「ゲテモノって言うな青木!」
「そーだよリンちゃん、見た目はこんなんだけど腕は確かだよ、芹ちゃんもイッセーも」
斉藤ゼミの4年でよくつるむのはこの4人。死んだ目に柄シャツの私が春山芹。一応女だ。一緒にジャカジャカやってたグラサンが森ナントカ。厳密には森山一星。こう書いてカズトシ。
私と森ナントカがジャカジャカやってるときにペチペチとボディーパーカッションをしていた図体ばっかデカい黒縁眼鏡の変態野郎が青山和泉。で、リンちゃんと呼ばれたのが青木臨。こう書いてノゾミ。
「一応さーあ? 俺ら卒論だの就活のあれこれ報告すっべっつって集まってる体なのに何でベース持ってきてるかね芹サン」
「テメーに言われる筋合いねーよ森ナントカ」
「ホントホント。何で真面目な話しよーって集まったのにセッション始まるかなあ」
「ドラムだから持ってこないだけだろテメー!」
「えー? カホンを持ってきてないんだから真面目にやる意志はあるよー」
青木を除く3人が楽器の経験者で、そうこうしているうちに暇さえあればジャカジャカやるようになっていた。そうなれば真面目な話なんか出来るはずもなく、そのまま酒盛りに移行すること数知れず。
和泉は今も軽音サークルで精力的に活動をしているみたいだけど、私のジャズ研は籍だけになっていたし、森ナントカに至っては完全にフリーの流しだ。
「うーん」
「芹ちゃん、どーしたの?」
「そうだ、バンドやろう」
「唐突だね!?」
いつだってそうだ。私がバンドをやりたいと思うのは。やりたいと思うのもやりたくないと思うのもすべて気まぐれ。まあ、こんなだからひとつのバンドが長く続いた試しなんかない。
まずは和泉に声をかけると、そもそも2人だけなのか、森ナントカを巻き込むのかと質問が飛ぶ。ただ、私がやりたいのはジャズバンドだ。森ナントカはジャンルこそ多岐に亘るがジャズは柄じゃない。
「うんうん、ジャズバンドやるんだね! わかったよ!?」
「テンションがキモいぞ和泉」
「嫁の申し出だからじゃない? ねえ森ナントカ」
「結婚式には呼べよー! 一曲歌ってやるぜえええ! 聞いてくれるかな?」
「いいともー」
ジャジャジャジャーンと音付きで飛んでくるのは縁起でもない話だ。とりあえず、森ナントカのデコを叩いてノックダウンさせる。
「お葬式にも呼んであげるねー! アメリカだからちょっと遠いけどー!」
「お前葬式アメリカとか移住すんのかよ!」
「ううん、芹ちゃんご希望の宇宙葬はアメリカからの打ち上げだからね!」
「ちょっと待て和泉、何で私がその宇宙葬を調べてたって知ってんだ!」
「ひ・み・つ。芹ちゃんのことはなーんでも知ってるから」
「キモッ」
「和泉、芹サンを嫁にして、くれるかな!」
「いいともー!」
「テメーらぶっ飛ばす!」
「えー!? そもそも芹ちゃんを最初に俺のお嫁さんって言ったのリンちゃんだしー! 目立たないからってやりたい放題じゃないありがとう!」
青木は青木で少し離れたところから親指を立てて防御態勢に入っているのだ。この連中、マジで全員正座させて一人ずつ金属バットでティーバッティングしてやる。
「おい、芹サンご乱心だぞ。止めろ和泉」
「さあ芹ちゃん、俺の胸に飛び込んで! ぎゅーってしたげるからげふゥッ!」
「いやー、見事なドロップキックで」
end.
++++
いろいろカオスな問題組、星大斉藤ゼミ回。春山さんと青山さんの友人、森ナントカとリンちゃん初登場。
青木さんことリンちゃんがリンちゃんなのはわざと。青木さんがアオキさんなのもわざと。その辺はそれぞれの後輩とのかぶせ。
しかし……うん、まあ、地上波でお送りできるのはこれが精一杯、という感じ……なのかしら……そもそも青山さんとかいう存在が以下自主規制