「夏合宿お疲れさまでしたー」
「はあああ〜……」
「つばめ、エクトプラズムみたいなの出てるぞ」
「しんっ……どかったあ〜!」
夏合宿翌日、改めて今後の方針を話し合うための対策委員の会議。今にもちゃぶ台をひっくり返さんばかりのつばめ。ため息からは何らかの気が見える。
この夏合宿、陰の殊勲者は間違いなくつばめだ。まあ、何がとは言わないけれど、俺は心の中じゃつばめに土下座しっ放し。壮絶な班の環境にありながら、会計としての仕事も完璧だったし。
「はい、そしたらこれ、番組の同録ね。各大学で配って下さい!」
「はーい」
「はいよしこれで終わりー! おさらばだー!」
夏合宿の同録MDを班員に配るところまでが班長の仕事。そのディスクが合宿翌日にしてもう上がってくる素早さ。一刻も早く3班という班を解体したかったのだと窺える。
班員のいる大学の代表にMDが配られ、それを班員に手渡してくれというやり取り。俺たちはわかったーとそれを素直に鞄にしまい込むけど、啓子さんだけは違った。ディスクを手に、考え込んでいる。
「つばめ、この同録だけど」
「うん」
「渡せなかったらゴメン」
「大丈夫。それは仕方ない」
「つばめ、啓子さん、それはどういう」
「このディスクと言うか夏合宿に関わる物って、ミラにとっては思い出したくないことを呼び起こす引き金になるんじゃないかと思って」
「ディバイドしようがなかったもんなあ。アタシのDとしての腕もまだまだだ」
3班の番組は2日目の夜、最後に行われた。緊張でご飯が喉を通っていなかったミラは、番組中も不安そうな顔をしていた。これは圧にやられてる、そう感じた瞬間のこと。
曲に入るタイミングを間違え、音が入り混ざる事故になった。マイクのフェーダーも下りていなかったから、ちょっと何やってんのと叱責する声を拾う。フォローのつもりか、ミキサーイジりのトークが始まる始末。
「アイツさ、自分がフォローしなかったらもっと散々だったのにどうして自分がモニターでボロクソに書かれるのかわからないってダイさんに文句言ってたからね」
「引くわー」
「でもって、自分のレベルに合う人と組めるような班編成にしなかった対策委員の責任とか言い始めてさ、マジで暴力沙汰にしないのが精一杯だったよ」
「よく我慢したつばめ」
三井先輩に関してはもうおいておこう。3年生に出ていただけるようなイベントはもうないのだから。
「ミラ、2日目の夜の自由時間にダメ出しされたのが結構堪えたみたい。サークル辞めたいって相談されてて」
「えっ!? 青女に帰ればあんなクズ気にしなくていいのに!」
「やっぱ、思い出しちゃうみたいだから。無理に引き留めることもできないし」
「もしもの話ってあんましたくないけど、ウチの班の3年枠が別の3年だったら絶対結果は違った」
ミラの今後のことは青女の3年生の先輩に委ねられることになるだろうと啓子さんは語る。結局、俺たちは最も恐れていた事態を想定していながら救えなかったのだ。
「来年以降、こういうことが決して起こらないように、俺たちは伝えていかなきゃいけないんだろうな。母数が増えればリスクも高まるし」
みんな、神妙な面もちだ。今後のインターフェイスをよりよい実践の出来る場として、よりよい交流の出来る場として守り、築き上げていかなければならないんだ。
「定例会とのあり方も考えていかないといけないな」
「そうだね」
end.
++++
夏合宿に関してはこれで一応一段落。対策委員のみなさんお疲れ様でした。つばちゃんも本当にお疲れ様。
もちろん今年触れられていないことに関してはまた来年以降に少しずつ明らかになったり変わっていったり。つばちゃんも3班を繰り返すのである……がんばれ。
もしものことがあったときは、対策委員だけじゃなくてインターフェイス全体で見ていかなきゃいけないよね、ということに気付いた年です。