「さて。MMPに新しく奈々が加入してくれて、新入生勧誘ミッション「ゲッティング☆ガールプロジェクト」はひとまずノルマを達成しました」
全員揃ってからも何となくうだうだしていたところに圭斗がマジメな話を切り出して、サークルが始まる。そう、男ばかりだったこのサークル室に女子が! ああ、女子とは何とかわいいんだ。
「ですが、来る者は程良く選び去る者は追わずの精神で、新入生が見学に来た際には化けの皮を適度に被りつつ適当な応対をお願いします」
「指揮官の菜月、一言」
「春風の似合うぽわぽわしてかわいい女子はまだまだ狙っていくぞ!」
「――ということです。菜月はまだ満足していないようなのでみんな心して当たってください」
圭斗のマジメな話が始まると、奈々はそれまで開いていたファッション誌をパタンと閉じてその話に耳を傾ける。どうだ、ファッション誌だぞ! この男連中じゃそんな要素は皆無! ……まあ、うち自身そんな柄じゃないけれどもだ。
ほんのり赤いほっぺたに、目元にはマスカラ。ああ、女子とは素晴らしい。どこぞのヘンクツ理系男は相変わらずどこの馬の骨ともわからないカボチャよりもイケメンをもっとよこせと喚いているけど、ひとまずうちの大勝利だ。
「知ってますか野坂先輩、菜月先輩は素敵なんですよッ!」
「はいはい知ってる知ってる」
「ちょっ、テキトーすぎっす! あの躊躇なく突きつけられる拳に、えげつないまでのヒール壁ドン、なかなか出来ないっすよ!」
うちはなるべく女の子を引かせないように優しい先輩という体で取り繕っていたんだけど、まあ、所詮化けの皮。そして猫かぶり。ただ、何がどう転じるかはわからないもので、奈々にはそれが良かったらしい。
「壁ドンとか、女子は少女マンガ的シチュエーションで夢見てるものなんじゃないのか」
「それは所詮マンガじゃないすか」
「まあな」
「男が女の子を壁や体格差を利用して脅すなんて屑ですよ野坂先輩。それに比べて菜月先輩はカッコいいんですッ! 自分よりも体格のいい男の人を壁に押しやって、退路を断って、くーッ! あれは狩る者の目でしたッ!」
やれやれ。それがうちと圭斗がこのノサカと奈々のやりとりに抱いている感想だ。
奈々の目にうちがどう映っているのか、ちょっと想像するのが怖い。と言うかどんな武闘派だ。実際そこまで暴力的ではない……はずだ。
「ん、奈々、菜月への憧れを募らせているところ悪いけど、次の話をさせてもらっていいかな」
「はっ、スイマセンつい熱くなりましたッ!」
「えー、5月から昼放送が始まるということで、その準備をお願いします。第1回目は火曜日の菜月・野坂ペアかな」
「はーい」
「わかりました」
――と、ごく普通のお知らせがされたところで、この空気を引き裂かんばかりに響くえーっという叫び声。何がどう驚くポイントなのかがわからないけど、奈々は一体どうしたんだ。
「菜月先輩と野坂先輩のペアですかッ!? これは熱いっす…!」
「ん、菜月と野坂のペアは割とよくあることだよ」
「そうですかスイマセンッ! でも早く見たいですッ! 聞きたいっす!」
「奈々は可愛いね」
「そんなー照れちゃいますーきゃっきゃっ」
何だこれ。それがこの圭斗と奈々のやりとりにうちとノサカが抱いている感想だ。
春風の似合うぽわぽわしてかわいい…? かわいいにはかわいいけど、思ったより第一印象とのギャップが発生しそうな予感。ただ、かわいい女子は正義だ! ギャップが何だ! それもまたうまーじゃないか!
「よーし奈々、おいでー」
「はいッ!」
「今からノサカと番組の打ち合わせするし、その様子を見てたらいい」
「えーッ!? いいんですか、いいんすかそんな大事なところをッ!」
end.
++++
奈々も大概である。というお話。奈々は菜月先輩神!っていうのが基本スタンス。奈々とノサカはやることの差がなくなるんだよなあ……
「奈々は可愛いね」「そんなー照れちゃいますーきゃっきゃっ」といういつもの件も安定供給しつつ。2人とも棒読みであればあるほどうまーである
今後はきっとノサカがいつもの感じになっていってそれを菜月さんと圭斗さんがじとーっとした目で見てるんだろうなあ。早く崇拝モードに入れ