「それでは、対策委員を始めます」
星港市某所コーヒーチェーン店禁煙席。そこにある机を人数分くっつけて始まるのは、向島インターフェイス放送委員会の中の組織である、技術向上対策委員会の会議。メンバーは各大学から選出された2年生7人。
この技術……めんどい。俗に“対策”って言うんだけど、対策はその名の通り放送技術の向上や情報交換、そしてインターフェイスに属する各大学の交流なんかをメインにしたイベントの企画運営という活動をしている。
今の3年生が1年生の頃までは実際に営業しているスキー場でDJをやらせてもらってて、そのDJに向けた技術向上の活動だったんだけど、暖冬とか不景気とかでスキー場の営業が停止してからの対策委員は交流メインで動いている。
「息をするように野坂が遅刻してきたところで、初心者講習会についてだけど」
「本当に申し訳ない」
対策の議長は向島の野坂。遅刻癖が本当に悪質。そのおかげで委員長のアタシに議事進行なんかの仕事がまるっと回ってきてる。対策委員の上役は大体ラジオメインの大学……特に緑ヶ丘と向島で回ることが多いみたい。
「野坂、議事進行代わってよ、議長でしょ?」
「いや、そのまま果林がやっててもいいと思うけど」
「いいから!」
「しょうがないな」
「しょうがなくないでしょ議長が議事進行しなくて何の仕事すんの!?」
「あーはいはいサーセンやりますやらせていただきます!」
野坂に進行を押しつけたところで、初心者講習会について。それっていうのはその名の通り、初心者に対する学生ラジオとは〜っていうところのことを、インターフェイス内で共有しておきましょうっていう講習会。
主に1年生を対象にしていて、ここで聞いたこと、見た物を持ち帰ってもらって、各大学での活動に生かしてもらえたらというようなこと。らしい。実際の番組を見せてもらったり、機材の接続がどうとか?
「とりあえず、日程は去年と同じ6月第1週の土曜日が目処でいいかな」
「そうだね。日付が決まらないと何にも出来ないもんね」
「みんな異論がないということで、6月第1週の体で話を進めよう。で、次に講習内容と講師だけど」
講習内容は毎年大体同じだし、アタシたちが去年の講習会で聞いた話を思い出して、あれが欲しいこれが欲しいと話し合えばいいこと。問題は講師。基本的に先輩にお願いすることになるんだけど、これがなかなか難しいんだ。
「こんなときミキサーええね、あんま人おらんから選ぶん苦労せんやん」
「何言ってんだヒロ、アナウンサーはよりどりみどりじゃないか。誰が何を得意とするかなどを踏まえて考えられることが贅沢だと思え」
この暢気な発言をしているのは野坂と同じ向島から出てる佐久間ヒロ。多分気苦労っていう単語を知らないし、同じ学科で授業もほぼ同じなんだから野坂を遅刻しないように引きずって来ればいいのにとは毎回みんなで言ってる。
「ミキサーは順当に伊東先輩か、個人的には石川先輩を推したいところではある」
「ですよねー。アナはインフォのことがあるしヒビキ先輩は確定として、問題はあと1枠。それこそよりどりみどりだから困るよねえ」
ああだこうだと各人の思う講師候補の先輩をプレゼンしていくことの楽しさ。3年生の先輩がどういう人なのかを知って、考えて、これこれこうだから講師をお願いしたいんだと説得するための武器作り。ただ普通にプレゼンしたんじゃ打ち負かされるに決まってますしー。
「同時進行で思いつくだけ講習内容を出していって、それを何かいい具合にまとめていこう」
end.
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対策委員の話をやってないなと思い出す。初心者講習会はファンフェスの前から始まっているのである。
現時点ではまだ夢と希望に溢れる対策委員の面々である。今年はここから果たしてどうなっていくのか! ノサカの先輩崇拝の進行と一緒に楽しみたい対策委員事情。
普通にプレゼンや依頼をする果林を打ち負かすと言えば直属の先輩である。前委員長だから対策委員のことは手に取るようにわかってるはずなんだがなあ