「うっうっうっ……あざがぐううん」
「あーはいはい、落ち着け伏見」
「もおヤダあの人おおお」
「朝霞、あずさにお水」
「ああ、悪いな大石」

 伏見に連れられやってきた西海駅前のバー。軽く飲みながらゆっくりと互いの部活の近況報告という予定だった。誤算は、ゼミの飲みではこんな風にならない伏見がここだとこんなに性質の悪い酔い方をすること。
 この店は大石の兄貴である女装家のベティさんがやっている店だ。ベティさんも伏見にとっては幼馴染みだから、この空間が伏見にとっては居心地のいい場所なのだろう。それで普段は抑圧された叫びが、こう。
 今日はたまたま大石がいて、普段はベティさんがさせないそうだけど相手を俺と伏見に限ることを条件に手伝っている。大石がバーカウンターの向こうから酒やらつまみやらを出してくれるのは違和感しかない。居酒屋の山口とはまた違う雰囲気がある。