「朝霞クン、また右手と左手が同時に動いてるけど」
「中間レポートとレジュメと発表が同じ時期にバタバタ来やがってるんだ」

 ゼミ室の机の上には無数の紙が広げられていて、何の作業をしているのかさっぱりわからない状態。右手も左手もペンが握られていて、それぞれ別のことをやってるんだろうけどいくら両利きだからって脳の構造が謎すぎる。
 朝霞クンは春学期も部活の台本とレポートを右手と左手で同時にやっていた。だけど、次第にその手は部活の方にシフトしていって、レポートにかかっていた右手が完全に止まってしまっていたように思う。
 でも、放送部は3年の大学祭で部活を引退するそうだ。部活の作業がなくなったからか、朝霞クンは常人離れした筆捌きを見せている。一昔前だったらビックリ人間とかでテレビにでれたかも。脳波とか調べてくれないかなあ、テレビの人。