アイツはこの人に敢えて言わないようにしてるんだと思う。だけど、長く一緒にいればわかることはあるもので、どうやら伊東はここ最近イライラしていると言うか、ピリピリしているのを宮林サンにはすっかり見破られていた。
 今年はワールドカップがあるからテンションがちょっと違うにしても、サッカーに関わる時のようなノリの違いではない。だけど、それに触れるべきか否かの結論は出ない。俺の元を尋ねてきた彼女はそう言う。

「――というワケなんですよ」
「なるほどな。で、アンタはどうしたい」