「……何のつもりだ?」
「日頃からお世話になっている浅浦クンに対するお礼企画です!」
「はあ」
――と言う割に、急に人の部屋に押し掛けてきて某腐れ縁さながらのまったり具合なんだけど、果たして宮林サンが俺の部屋にいるのは本当にお礼企画とやらなのだろうか。
「みやっちが急にゴメンねえ」
「関さんは気にしないで、よくあることだから。と言うか関さんもこの人に巻き込まれてるんだよね」
「巻き込まれたと言うか、共催だね」
「はあ。じゃあ、お礼企画っていうのは信じていい?」
「それは信じてもらっていいよう」
粗茶と適当なお菓子を出せば、果たしてどうした物か。共催ということは突然の来訪劇に関する本題を関さんから引き出すことも出来なくはないんだ、きっと。
「浅浦クンの部屋って入ったことないから、新鮮だねえ。やっぱり本がいっぱいあって」
「何か気になるタイトルがあるなら貸そうか」
「本題が終わったらじっくり見させてもらうよー」
「あ、本題って」
「うん、お礼企画ね。こらっ、みやっち起きなさい!」
「ちょっとみなも痛い!」
「みやっちのお尻が叩きたくなる弾力なのが悪ーい」
関さんから文字通り叩き起こされた宮林サンが鞄から取り出したのは白い袋。それを色気も何もありませんがと差し出され、特別重量感のあるでもないそれを恐る恐る開いてみる。
すると中から出てきたのはお茶っ葉の袋。緑茶と、ほうじ茶の2種類がそれぞれ200グラムずつ。生産地のシールにはお茶の産地として有名な山羽エリアではなく、白影エリアと書かれている。
「みやっちが選びました」
「あのね、甘みじゃなくて苦みが強いタイプのお茶なんだけど、多分浅浦クンの口には合うと思うんだよね。うちも結構好きだったよ」
「またどうしてこれを俺に?」
「だって浅浦クン誕生日だし。それにうちらたまに浅浦クンにご飯ごちそうになってるから、そのお礼をね」
物プレはカズとカブると嫌だったしー、と恐らく聞かない方が良かったであろう裏事情と一緒にこのお茶をくれた経緯を話す宮林サンの様子からすれば、これは本当にお礼企画でいいのだろう。
彼女の信条が「世の中ギブ&テイク」だとしても、俺が特別この人に何をしてあげているというわけでもないのに。こういうところがあるからやりたい放題のこの人を憎みきれないと言うか、絆されていったんだと思う。
「それならせっかくだし、2人がくれたお茶でも飲もうか」
「浅浦クンならそう言ってくれると信じておいしいようかん買ってきてるんだよねー」
「本当に? どこの羊羹?」
「情報元は出版部データベースです」
「関さん情報なら期待出来るな。今淹れるからちょっと待ってて」
何となく始まったちょっとしたティータイム。いや、緑茶と羊羹でティータイムと片仮名で言うのは少し違う気がするな。手伝うよう、と台所に来てくれた関さんには人数分の皿を差し出して。
「切り分ける用の包丁かナイフってある?」
「あ、うちの包丁左利き用だから俺がやるよ。関さん右利きだよね」
「浅浦クン」
「ん?」
「誕生日おめでとう」
「ありがとう」
たまにはこういうのも悪くないなと思い始めた頃、この空気を引き裂くように部屋の方から高らかに響くのは宮林サンの声。呼ばれたのは、関さんだ。
「行ってやって、一人にしとくと拗ねるから」
「うん。……はあ〜い! 今行くから大人しくしてなさあい!」
end.
++++
というワケでいっちー不在の浅浦誕のお話。慧梨夏みなもの突撃お宅訪問の回です。まあ、慧梨夏はいっちーとたまに突撃訪問してやりたい放題だから警戒されたんだろうね!
そしてみなもちゃんが言うには慧梨夏のお尻は叩きたくなる弾力らしい。うん、まあある程度むっちりしてるだろうからな。
浅浦クンは甘いものが苦手だけど、上品な甘さの和菓子であればしっかり食いつくらしい。つぶあん派かしら、こしあん派かしら。その辺考えたいね。