「アタシね、子供と台所に立つのが夢だったのよー」
「厳密には少し違いますよね」
「いーのいーの、もう義理の息子みたいなモンだし」

 ――という件ももう何回繰り返したやら。慧梨夏の実家、とあるマンションの一室にお呼ばれすると、大学に上がった頃からは俺も台所に立つようになった。
 慧梨夏のお母さんの千春さんは、現役で料理を仕事にしている人だ。某所レストランで(休みもあるけど)毎日腕を振るっているらしい。その人の夢が、子供と一緒に料理をすること。