「それはコスト的にどうなんだっていう」
「味は確かだったじゃん!」
「そうは言っても高崎先輩を納得させないことにはこの手法は取れないっていう」
「それでなくても学祭での酒類の販売は禁止されてるしね」
「飲むワケじゃないよ、調理に使うしアルコールは飛ぶからしょぼんじゃないよ!」
焼きそばの盛られた皿が並ぶ中、高木、エージ、ハナの3人がわあわあと論戦を繰り広げている。MBCCは例年DJブースと食品ブースの2ブースを出店する。そして、食品ブースは例年1年が責任者となるというのがMBCCの伝統。
「糸魚川呉服店でーす」
この声に、待ってましたばかりに声が上がる。大学祭のステージと模擬店で着る衣装が上がってこれば、さっそく始まる試着会。実際、着た感を見て追加注文をしたり修正したりするのだ。
あれ以来、シーナさんの襲来はない。3年生の先輩も穏やかだし、沙都子も落ち着いている。1年生もいつものように賑やか。だけど、アタシと直はこの平穏がいつまでも続くものじゃないと疑ってしまう。