ゼミ室に火花が散っていた。包丁を握る高井と、それを止めようとするリン。そしてそれを見守る美奈の手には、なにやら見慣れない物の袋。傍観する俺は、別にどうなろうと知ったこっちゃない。
高井の道楽で大学祭にゼミで食品ブースを出すことになった。リンが情報センターで押しつけられた芋の処理も兼ねるという意味でメニューはカレーに決まった。カレーならば誰にでも失敗せず作れるだろうと。
ただ、カレーを作るだけなのに高井の手は絆創膏だらけだ。リンのヤツも危なっかしい手つきをしているからか、美奈が付きっきりで補佐している。と言うか、補佐の距離が近いし本当に手を取って補佐する必要がどこにあるのかリンめふざけるな。
カレーと一言で言っても多種多様。今現在、誰がどんなカレーが好みかで揉めているのだ。普通に作れば皆満足するのではないかという考えは、高井からすれば甘い考えで、そんなことでは売れない、らしい。