こーたなんかはたまに野坂を完璧超人って表現するンすけど、そんな野坂にも欠点っつーか、弱点みたいなモノは少なからず存在する。もちろんこーたのその表現も、イケメン詐欺とか偏屈理系男という蔑称を前提にしたネタなのはお察し。
「律、お前またBGM増えてないか」
「これはこないだネットでサクッと試聴したらイー感じだったンで次の日に買いに行ったんスわ。そしたらそこでさらにいいBGMもあってそりゃァー有意義な買い物に」
「菜月先輩に匹敵する買い方だな」
「なかなかいい感じですね。どんなタイプのアナウンサーさんにも無難に対応出来そうで。この曲だけで言えば、昼過ぎくらいの番組という体で使うのが適してますでしょうか」
野坂の欠点っつーか弱点っつったら、引き出しの少なさにある。BGMもそうだし、番組構成にしてもザ・無難っつー感じで。基本中の基本の構成をやらせたら右に出るミキサーはそうそういないンすけどネ。
自分とこーたが最近どんなBGMを仕入れたのか聴かせ合いをしていても、野坂はそれをただボケーっと見てるだけで、俺は今年度も今まで使い倒したCD一本で行くとか何とかいう宣言。
BGMって観点で言ったら奈々なんかもインストロックのイメージがついていて、なるほどそうきヤすかァーなんつって目を見張るところがあるンすけど。野坂と言ったら。こうと決めたら梃子でも動きャしねーんすから。
「野坂さん、あなたもせめてもう1枚くらいBGMの音源を用意したらどうですか」
「手持ちの1枚とサブ的に使ってるもう1枚で間に合うしなあ」
「間に合うしなあじゃありませんよ」
「ヤ、確かにあの1枚は優秀スよ? でも、それ故にカブりやすいっつーリスクはありヤすよね。現に夏合宿でも菜月先輩との番組で使ってたBGMがカブってやシたし」
「確かになー。お前の言うこともわからないでもない。あの曲を、今後誰かとの番組で使える気もしないんだ。あの曲は“菜月先輩の”BGMだし」
つまり、弾の少なさは昼放送で3期連続菜月先輩と組んだことの弊害だったっつーコトすね。下手に環境を変えると菜月先輩のメンタルによろしくないとかそういうようなコトで。菜月先輩に強すぎる忠誠を誓った男の末路っつーヤツすか。
でも、菜月先輩はもう引退されたンすから、少しずつ考えも柔らかくしてもらわねーと困るンすわ。機材管理担当がBGMを全然持ってないとか。順当に行けば初心者講習会の講師にだって抜擢されかねないのにそれこそ詐欺もイートコすわ。
「いースか野坂、トークタイムの誤差を常にプラマイ5秒以内に収めてくれるアナウンサーなんざそうそういないし、番組収録の1週間前から次に使いたい曲をその理由も添えてよこしてくれるアナウンサーなんかもそういないンすわ。昼放送のオンエアに顔を出してくれるかどうかすら下手したら怪しい」
「場合によっては毎週収録が出来るかどうかも怪しいんですからね」
「お前の常識は世間の常識じゃない。これを知っとかないと、後々痛い目を見るのはお前スよ」
みんながみんな菜月先輩みたいな技量があって、みんながみんな菜月先輩みたいなスタンスでやってくれるワケじゃないンすから。どんなアナウンサーに当たっても対応できるミキサーでなきゃいけないんすわ。
「でも、BGMなんてどうやって探したらいいんだろう」
「ヤ、お前ネットしまくりだろ! 動画サイトでも音楽投稿サイトでも腐るほどあるだろーがよ! そんで気になるのが見つかったらポチるとかメモるとかして音源を探せばイーだけの簡単なヤツじゃないスか」
「つかそれがめんどく」
「ほほーう。ま、別に野坂の音源の引き出しなんか知ったこっちゃナイすわ。精々先輩らの思い出に浸ってればいーすよ」
「野坂さん野坂さん、土田さんがこれだけ助言してくれてるんですから、本当にラブ&ピースされる前に探しましょう? 音源。私も手伝いますし」
「CDショップ行くなら付き合いヤすぜ、自分これから星港に行く用事があるンで」
end.
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MMPの2年生ミキサー陣がわちゃわちゃしてるだけのヤツ。ミキサーとしてのノサカの欠点についてのお話。
MMPのミキサー陣は互いにいろいろ切磋琢磨してるんだけども、BGMに関しても三者三様の選曲と事情があるらしい。しかし相方アナウンサー事情を語らせるとノサカはあまりに恵まれ過ぎた。
りっちゃんとCDショップに行って菜月さんみたいな廻り方の練習でもすればいいのにノサカよ