「はー……せっかく人がフェス終わりでいい気分に浸ってたのに」
「そんなこと言わないでよ芹ちゃ〜ん、ねっ」
「どうしてお前が北辰にいるんだ、和泉」
「俺もフェスに来てたんだよ。ついでに旅行して、芹ちゃんに会いたいなーって。ご両親に挨拶した方がいいかな、芹ちゃんに似た可愛いお孫さんを作りますって」
「帰れ」
和泉がフェスにいるのはまあわかる。軽音でバンド組んでるような奴だし、今は大学も夏休み。フェスで遠征するためにバイトを休んでいてもおかしくないし、私でもよっぽど目当てのフェスならそうする。
それがどうした。実家の近くにいると画像付きで送ってこられた時には夏なのに背筋が凍るかと思ったなど。いや、フェスのために北辰にいるだけならいいんだ。どうして実家の近くの、それも私の行きつけの喫茶店にいるのかと。