「それじゃあロイド君、明後日なー!」
「おう、サンキュー」
向舞祭が終わって1日。野暮用で向舞祭に来ていたという高校の同級生、シンこと飯野晋哉と一緒に戻って来た地元。シンは自分の車で帰ると言うから、それに便乗して山羽駅まで乗せて来てもらったのだ。
駅まで着けば、そこからは俺の兄貴(潤兄さん)が迎えに来てくれると言うから連絡を入れてしばらく待っていることに。兄貴は4コ上で、中学校の先生(教科は数学)になって3年目だ。
「あっ、いたいたー! さっちゃーん!」
「あー! 慧梨夏サーン!」
「……黒っ! さっちゃん焼けたねえ、誰って感じだよ」
今日は向舞祭の2日目。緑大の向舞祭チームに参加していたさっちゃんの激励……と言うにはタイミングはちょっと遅かったけど、メインステージで行われるセミファイナルまで進んだのはすごい。
えっ、うち? 今日は東都でイベントに参加して、そこから帰って来て現在に至ってますよ。向舞祭にはカズも音響スタッフとして出てるし、ちょっとだけ興味があったんだよね。本当はカズが音響やってるところを見たかったけど。
大通り公園のメインステージには、星港の人という人がみんな集まってるみたい。さっちゃんとの会話も声を張らないと全然通らないし。コミフェで体慣れててよかったー!
「松岡圭斗、復活!」
向舞祭当日、定例会メンバーはまず自分たちが落ち合って現場入りすることにしていた。それまでの練習で完全に死んでいた圭斗が心配されたけど、落ち合うなりこうだ。復活と上げた声は、それまでの屍からは想像もできないハリとボリューム。
「類義語だろうけど、復活と言うか蘇生って感じだな」
「見た目がまだ痛々しいもん、ご飯食べて来た?」
「ふっ……朝霞君、大石君、何とでも言うといいよ。一度死んで蘇った僕は過去の僕より強化されているよ」
「慧梨夏が野暮用で東都に行ってたんだけど、そのお土産の鳥サブレ。よかったらみんな食べて」
「わー、おいしそー! いただきまーす」
「俺も最近はご無沙汰だな。有り難く」
「あっ、お菓子ならアタシも食べるー」
こないだ慧梨夏がコミフェ帰りにくれたお土産の鳥サブレは、結局一人で食べきることが出来ずに現在に至る。やっぱちーちゃんはさすがだし、カオルも安定。ビッキーはちょっと疲れてきてるみたいだけど、お菓子への食い付きはさすが。だけど。
「か、帰りたい……」
「何言ってんだコシ! 俺たちはコシと水鈴さんのデートを邪魔しようだなんて思ってないし、どうぞ存分に楽しんでくれ!」
「デートじゃなくて尾行の付き添いだ」
例によってあやめのカップル尾行に付き添った結果、あやめはまーた勝手に消えた上に裕貴らは見失い、俺の傍らには水鈴。そしてその現場で何故かいるインドア集団向島の極悪3人衆に捕まって現在に至る。
大方の予想では、あやめが圭斗に情報を流したのではないかと思ったんだけど、今回は本当に偶然らしい。そしてその圭斗も、俺と似たような顔をしている。これは紛れもなく「帰りたい」という顔だ。