「センターを利用される方は学生証を……」
「こんにちはー」
「あっ、大石先輩!」
受付越しにひらひらと手を振る男に、川北は飼い主の現れた犬のように機嫌を良くしている。スウェットを着たこの男はおそらくサークルか何かの先輩であろう。春山さんなどとは違って愛想の塊のような顔をした男だ。
そう言えばどこぞの性悪狸が、サークルの同期に馬鹿お人好しの男がいて、今年度のサークルのことは全部そいつに押しつけたと言っていたような気がする。見るからにこの男があの性悪に利用された哀れな奴なのだろう。いかにも人が良さそうだ。