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【SSS】火は自らの手で消していく

 約束の午前9時、その10分前。ちょうど見越した通りにそのピンク色のマンションの前に到着。あとは時間きっかりに4階から降りて来るであろう奴を待ちつつ一服をするのだ。ここで注意すべきはかの女傑の存在だが、さすがにこの時期にもなると4年生はアパートを引き払っている。あの人に目撃される心配はないだろう。
 足元には野良猫が何匹も歩いている。前々から思っていたが、この辺りは猫が多い。緑ヶ丘大学にも猫にまつわる都市伝説みたいなモンがあるし、もしかすると豊葦一帯がそうなのかもしれねえ。一匹の三毛猫が向かいの大きな家に向かって歩いて行く。

「おーい! ユーヤ!」

 どこからか、多分俺を呼ぶ声がする。だが、前にも後ろにも人はいない。俺がきょろきょろと声のする方を探す中、おーいおーいと声は響く。ただ、気にはなったが深くは気にしなかったから、声の主がわからないならわからないなりにまあいいかと俺は一服の方を優先したんだ。


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