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【SSS】余裕の範囲のお買物

「エイジ、ちょっと買い物に付き合ってほしいんだけど」
「買い物? 何を買うんだっていう。食糧か? 掃除用具か?」
「そろそろ机を買おうと思うんだよ」
「それは喜んで付き合うべ! これで床に皿を置いて食う飯にもおさらばだっていう!」

 先月末に、突然口座残高が増えてたから何事かなあと思ってよくよく考えたら、アルバイト代が振り込まれていたんだということに気付く。結構な額が振り込まれていたのでちょっとした買い物をしようと決意したんだ。
 倉庫での吊り札付けのアルバイトは、元々ゼミ合宿の費用を賄うために始めた物だ。でも、働いているうちにゼミ合宿の費用は軽く捻出出来たし、残りのお金はどう使おうかってずっと考えてた。でも、エイジが「無駄遣いはするな」って睨みを利かせてて。
 本当はBGM用のCDを買ったり靴を買ったり、少しいいお酒を買ったりしたかったんだけど、それをしばらく我慢して、使い方を熟考。この部屋に足りないものや、これからの生活に必要な物を考えた結果辿り着いたのが机だった。


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【SSS】無意味な深夜クラフト

「やあ。みんなのキョージュだよ。今日はこれからバネと2人放送をしていくよ」
「しかし、正直キョージュと2人でも話すことがないというのが本音で」
「そんなこと言わないでさ〜、楽しく話そうよ!」

 何故こんなド平日に生放送が始まったのかがわからないのだが、その辺りは大体気紛れなのだから深く考えることではないのだろう。マインクラフトの生放送用ワールドに入って何をするでもなく農業をしたり採掘をしたりしながら喋るだけの企画だ。
 世間では卒業式シーズンらしく、スガノとカンノ、それから朝霞は卒業式とその後の追いコンやらで今日は参加出来ないらしい。この3人は同じ部活のはずだが先の2人と朝霞では追いコンの場所や時間が違うらしい。変わった部活だ。それから塩見さんは会社の繁忙期で今日も残業だろうと。


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【SSS】せめてパブリックスペースは

「それじゃあエージをリーダーに掃除の方よろしくお願いします」
「了解っす!」

 機材の壁が築かれてごちゃっとしていたMBCCのサークル室から物が消えた。消えたと言うか、厳密には運び出したんだけど。事の発端は、エイジのくしゃみだった。
 春は何気にいろいろ話し合うことが増える季節で、特別活動日を設けて1・2年生が集まってたんだ。しばらく人の出入りがなかったサークル室の空気が動き出して、いよいよ次の学年に向かっていくんだなあと思ったら。エイジがくしゃみを連発したんだ。
 風邪か花粉症かなって思ったけど、どっちも違うって。くしゃみの原因は、溜まりに溜まった埃だったんだ。綺麗好きのL先輩がサークルの代表になったことで、この問題が想像よりも大きく取り上げられることになった。一度部屋の中をすっからかんにして掃除をしようという日が設けられましたよね。


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【SSS】火は自らの手で消していく

 約束の午前9時、その10分前。ちょうど見越した通りにそのピンク色のマンションの前に到着。あとは時間きっかりに4階から降りて来るであろう奴を待ちつつ一服をするのだ。ここで注意すべきはかの女傑の存在だが、さすがにこの時期にもなると4年生はアパートを引き払っている。あの人に目撃される心配はないだろう。
 足元には野良猫が何匹も歩いている。前々から思っていたが、この辺りは猫が多い。緑ヶ丘大学にも猫にまつわる都市伝説みたいなモンがあるし、もしかすると豊葦一帯がそうなのかもしれねえ。一匹の三毛猫が向かいの大きな家に向かって歩いて行く。

「おーい! ユーヤ!」

 どこからか、多分俺を呼ぶ声がする。だが、前にも後ろにも人はいない。俺がきょろきょろと声のする方を探す中、おーいおーいと声は響く。ただ、気にはなったが深くは気にしなかったから、声の主がわからないならわからないなりにまあいいかと俺は一服の方を優先したんだ。


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【SSS】春の足音が焦らせる

「ユキちゃん、やってる?」
「あっ、直クン先輩おはよーございまーす」
「はい、差し入れ」
「ありがとうございますー」

 5月にある植物園ステージに向けてABCは春休みから動き出していた。この植物園ステージは毎年2年生が中心になって計画してるんだけど、それはつまり1年生のうちから考えなきゃいけないということで。去年は啓子がステージの台本を書いてたんだけど、今年はユキちゃんがその役割に落ち着いたみたい。
 今の1年生はサドニナ、ユキちゃん、それからなっちゃんの3人がいる。この3人の中だとステージの台本を書けるのは多分ユキちゃんだろうなって。なっちゃんはミキサーだしまだABCに入ってからの日も浅い。サドニナは……多分台本を書くよりもそれをやる方が得意な感じだろうし。


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