Maniacer's Spiral (R)

　例によって青女主動でやってきました２年有志のスキーツアー。誰もウィンタースポーツには慣れてなくてたどたどしいけど、それはそれでなるようになるだろうと。理屈は調べてきたし、あとは実践だ。
　ゲレンデにはいくつもスピーカーが取り付けられていて、音楽が流れている。スキー場ならではの聞こえ方に感動していたら、単に有線放送ではなくラジオ番組ではないか。しかもその声に聞き覚えがある。

『この番組は、D・A・I、ダイこと水沢祐大がスキーセンター２階インフォメーションコーナーから生放送でお送りしています』

　疑惑が確信に変わったあああ！

　今日も今日とて俺は光熱費のためにバイトをしていて、やってきたのは例の腐海のあるマンション。だけど、今日は奴に会わなくて済むはずだ。Ｓサイズ１枚なら。
　４階まで登って、左に曲がる。例の腐海はスルーして、角部屋の前に。Ｓサイズ１枚だから大丈夫だとは思うけど、宮ちゃんがいませんように。

「ちわー、ピザデリーです」

　インターホンを鳴らせば、すぐにはあいと反応があって、扉が開く。部屋着であろうスウェット姿のメガネっ子。

「えーと、モッツアレラトマトのＳサイズっすね。880円っす」
「はあい」
「確認なんすけどさすがに今日は宮ちゃん、いないっすよね」
「大丈夫ですよお」
「なら大丈夫っす。あざっす」

「ひいっ、ごめんなさい…！　わざわざ説明していただくだなんて！」
「いや、わかってるに越したことはないし、認識を共有するのも大事だから。俺たちも確認しておこう」

　――というワケで、技術向上対策委員会は今年度のラストイベントとなる春の番組制作会に向けて動き出した。このイベントでは、２年生と１年生の対策委員が一緒に動くことになる。
　ここで始まったのが、夏合宿の後から青女のサークルに入った“わかば”に対する簡単なダブルトーク講座。わからないことをわからないと素直に言えるのはわかばの強みかもしれない。

「ホントにもう、アンタたち揃いに揃って残念ねえ。まあ、福井ちゃんはしょうがないわよね。問題はあずさ、アンタよ」
「うわあああん！」

　ベティさんのお店で、バレンタインの戦果報告をしているのだけど……私の隣で大泣きしているこの子を気に掛けたら、ベティさんはほっときなさいと一蹴。
　大泣きしているこの子、伏見あずさはベティさんとは古い付き合いなんだそう。ベティさんの弟である大石君とは高校までずっと一緒で、今は星ヶ丘大学だとか。

「ニイナ大感謝祭ですよー！　サドニナオンステージ開催中ー！」
「サドニナ、大人しくしてて」
「Ｋちゃん先輩のケチ！」

　他の大学さんは春休みにあんまり活動してないみたいだけど、ABCは５月の植物園イベントに向けて春休みもまあまあ活動してる。早いうちから準備しとかないとね。
　だけど、今日は日付があまりよろしくない。2月17日。ニイナの語呂合わせでサドニナがご機嫌だし、それに反比例するようにＫちゃん先輩の機嫌がよろしくない。