「野坂、お疲れ」
「伊東先輩、この度は講師を引き受けて下さって本当にありがとうございました。途中、ご心配とご迷惑をお掛けしてしまい、とても申し訳なく思っています」
初心者講習会が終われば、対策委員と講師の先輩方は少し残って今日の反省会。それも終わったけれど、すぐに帰る気にはなれなかった。どこかで、何かが引っかかっているんだと思う。
俺はよほどわかりやすい顔をしていたのか伊東先輩が声を掛けて下さって、今は星大近くのファストフード店にいる。伊東先輩と2人でこうして顔を合わせる機会もそうないし、これも講習会の魔法か何かだろう。
初心者講習会当日。対策委員は早めに集合して打ち合わせや会場設営を行う。しばらくすると講師の先輩方も来られるし、その後から一般の参加者が。それまでに万全にしておかなくては。
「おーい、つばみー!」
向こうからブンブンと大きく手を振ってやってくる男に、つばめがビクリと反応する。身長は165くらい、ヘアバンドをしてデコが出ている。くりくりっとした感じの目でハーフパンツがよく似合う。しかし一般参加者の集合時刻には早い。