「ふ〜、ただいま〜」
そう挨拶をしても部屋からの返事はない。それはそうだよね、家主はまだ俺に負ぶわれたまま眠っているのだから。
背負っていた朝霞クンをベッドに下ろし、服を緩める。服の場所なんかは知ってるから勝手に着替えさせることも出来るけど、目覚めたときにびっくりするだろうから敢えてそのままで。
2日間の丸の池公園ステージが終わった。星ヶ丘大学放送部の一大イベントだからそれはもう盛大な規模でのお祭り。当然気合は入ってたし、何としても成功させたいよね、みんなに楽しんでもらいたいよねって。
「あー、面白くない! 世の中平等には出来てないなあ!」
部長が荒れている。今に始まったことじゃないとは言え、早くこの不機嫌の波が去ってほしい。部長が不機嫌な理由は明らか。朝霞班のステージがそれらしい形になっていたからだ。
今日に至るまで、部長は朝霞班のステージが不発に終わるよう……厳密には、枠さえも与えないようにするための妨害行動に終始してきた。その妨害行動は部長だけでなく日高班の全員が巻き込まれている。
ただ、枠は監査が班の実力を理由に2日で1時間ずつ、計2時間を与えた。部長は朝霞班にそれだけの枠を捌けるはずがないから泣いて返してくるという目論見だったそうだが、見事なまでに外しまくった。
それならばと所沢を送り込み、朝霞班の小道具類……出来れば高そうな物に対する破壊活動に出たものの、それすら逆手に取りやがったのだ。そしてブースに侵入されたことにも気付かれたのか、朝霞は深夜のブースに張り込んでいたとか。