「宇部、少しいいか」
「何かしら」
菅野が険しい顔をして私に話しかけてきた。人がいるところでは話しにくいことのようで、図書館の自習室まで連れ出される。相当警戒しているようね。ちょっとした話なら人払いをするにしても部室で、ということがほとんどなのだけれど、部室も今は人の往来が多いからと断られたわ。
「よほど重大な話なのかしら」
「俺が日頃付けている議事録と、坂戸の管理している会計帳簿を見比べた」
「部費の中に使途不明金や、各班に割り当てられているステージ準備用の資金に差異でもあったのかしら」
「……その様子だと、お前は全部知っているってことか」
「先に言っておくと、私も全容を掴んでいるわけではないわ」