第四章・2 五禽戯・熊
《実習》
準備
両足を肩幅よりやや広めに開いて立ち、両手で下腹を抱きかかえるような形で両掌を離して下腹に向けましょう。
?
軽く息を吸いながら右足に体重をかけ右て(指)を右わき腹の横まで持っていきます。
?
続いて、息を手や足から大地に向かって吐き降ろすような感じで、右膝を曲げ右肩を右から正面の下に落としながら肘を伸ばし、体を前に倒していきます。
?
次に、大地の気を足の裏から下腹の中まで吸い上げるような感じで右膝を伸ばし、体を起こしつつ右肘を曲げ掌を下腹まで挙げてきます。
?〜?の動きを左側でも行ない、それを左右交互に繰り返しましょう。
*連続して行ないますので、?と?は連続して行ないます。
従って、息を吸いながら体を起こすと同時に体重を移動させて下さい。
《開設》
●鳥と熊との対比
五禽戯の中でも、鳥と熊は是非、覚えて実践して頂きたい功法です。
〔鳥〕が天の気(陽の気)との交流、採気であるならば、〔熊〕は地の気(陰の気)との交流、採気になります。
五臓や経絡の流注で言えば、肺と心は陽であり、経絡も手に流れています。
それに対して、肝と腎は陰であり、足に流れています。
脾は五行的には中央なのですが、経絡的には足に流れていますので、陰の中に組み入れても良いでしょう。
〔鳥〕が天の気との関係において肺や心に働きかける作用があるとするならば、〔熊〕は地の気との関係において脾、肝、腎に作用する功法と言えるでしょう。
●後天の元気を作る脾の働きに注目
東洋医学で用いられている〔脾〕というのは、現代医学で言えば、飲食物の消化、吸収といった胃腸全体の働きを差した言葉です。
私たちが生まれながらに持っている素質としての原気を〔先天の原気〕と言います。
その先天の原気を用いて命を全うする訳ですが、それだけを用いていては命は直ぐに尽きてしまうでしょう。
その先天の原気にプラスして、呼吸によって天の気を採り入れ、飲食によって地の気を採り入れます。
この場合の地の気を〔水穀の気〕と言います。
採り入れた天の気(陽の気)と水穀の気(陰の気)を先天の気と混ぜ合わせて作られた気を〔後天の原気〕と言い、この後天の原気が経絡を介して全身に廻り、今の命を燃やしているというのが東洋医学の考え方なのです。
まるで、酸素と糖質を用いて、細胞の中でミトコンドリアがエネルギーを作っていることがわかっていたような感じがします。
つまり、呼吸と飲食が正しければ寿命は延びるし、そこを不摂生にすれば、余分に先天の原気が使用され、その分、寿命が短くなるということです。
そして、この呼吸と飲食に関係する働きを持っているのが肺と脾であり、それらの働きを活性させるのが五禽戯の〔鳥〕と〔熊〕なのです。