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純。三次創作13。




なんとなく、立ち寄った花屋。
元々、女子寄りの趣味の俺。
今はハオルシアという多肉植物が流行っているらしく、広々とコーナーを展開していた。
確かに、ぷくぷくしていて可愛いかもしれない。
そんな事を考えながらしげしげとハオルシアを眺めていたら、不意に後ろから声をかけられた。


「成瀬純さん、ですよね」

呼ばれたからにはシカトする訳にいかず、振り返れば、顔立ちの整った青年が立っていた。
怪訝に思いながら彼を見れば、青年は慌てたように自己紹介をしてきた。

「あ、俺、ヘブンズの鳳瑛二って言います」

…喜一妹はからの情報にない人物だ。
返事に困っていると、青年鳳さんは俺の横に並んで、ハオルシアを眺めた。

「可愛いですね」
「あ、あぁうん」
「こういうの好きなんですか?」
「うーん、まぁ好きかな」
「じゃぁお近づきの印に、何か買いましょう」
「は?」

どれがいいですかねぇ、と有無も言わせない鳳さんはさっきより真剣にハオルシアを見つめだした。

「いや、あの」
「俺もアイドルやってるんです。成瀬さんと仲良くなれたらなって思って」

はにかみながら言われるから、悪い気はしなかった。
ただ、俺は彼のことを知らないし、彼も俺のことは仕事でしか知らないはずだ。


「あー、俺これかなぁ」
「ふやじょう?」
「うん、なんか唯一トゲトゲしてて可愛い」
「じゃぁ俺もそれで」


男同士のお揃いなんて、なんか変な感じだけど。ついでに財布出したら俺が払いますなんて言われて立場がない。


「この後、予定ありますか?」
「いや、夜まではないよ」
「じゃぁ」


お茶しませんか?
そう言われて、噴いてしまった。
なんで、よく知らない彼とお茶なんて…とは思ったが、この業界。仲良くしてて損はないと思ったので。頷いていた。



しっとりと。
隠れ家的なカフェに連れていかれた俺は、珈琲を頼んで、そわそわ。
何を訊かれるのだろう。そして鳳さんはどんな人なのだろう。

「俺、アイドルとか疎くて。すみません」
「いえ、俺なんてまだまだですから」
「でもヘブンズってアイドル界では有名なんでしょ?」
「成瀬さんほどじゃないですよ」
「いや、俺こそ。最近のぽっと出なので。鳳さんに比べたら…」
「…その、鳳さんって呼び方止めませんか?」
「え?」
「俺、兄がいるんで。紛らわしくて」
「…じゃぁ、瑛二さん」
「はい!」

その後は、瑛二さんの兄と喜一が仲がいい事やら、俺がこの前、事件で悪目立ちした事とか、アイドルというよりモデルや俳優の方が向いてるんじゃないかって、瑛二さんにアドバイスされたり。
結局俺の話ばかりで。
瑛二さんについては殆ど分からなかった。
悔しかったから、今度は瑛二さんの事を聞かせて下さいと、また会う約束を取り付けた。いつになるかは分からないけど。



夜の仕事を終えて家に着く。
不夜城をテーブルの上に飾った。
生活感のなかった俺の部屋にを彩る唯一の植物。
なんでお揃いだったのだろう?
疑問は残るが、まぁ好青年ではあったので、善しとしよう。





あとで喜一が妬くよ!

灯色。無防備。





家に上がったのは初めてで。
ちょっとごめんね、と俺を残し一旦部屋を出た灯色。

戻って来た灯色の姿に目ん玉飛び出た。
そんな俺に、灯色は少し恥ずかしそうに、部屋着だと言った。

タンクトップにパーカー、ショートパンツ。

本人は至って普通だと思っているようだが、俺にとっては目に毒だ。
良からぬ妄想が頭を過る。

頭を掻いて、テーブルに置いた将棋盤に集中する。
駒を進める度に考える時に口元に指を当てる仕草は見慣れているのだけど。

って、集中できるか!!

俺が勢いよく立ち上がると、それに吃驚したような灯色。
腕を掴んでベッドにその身体を投げる。

なに!?と状況の分からない灯色の上に跨って、抵抗出来ないように両手をまとめ上げた。


「お前が悪い」


そう言って、良からぬ妄想を現実に起こそうとする。
案の定、涙目になった灯色。
その破壊力は想像以上だ。

首筋に噛み付くと、ビクリと身体を固くする。
これから自身の身に降りかかるであろう事に気付いた灯色の怯えた表情。…そそる。


その後はご想像通り。





どうにか名前で呼ばせる事に成功。
そして漸く、手に落ちた。

純。三次創作12。




「…しごと、しろよ」

呻き声にも似たくぐもった声と共に頭を払うように叩かれた。

「!?」

吃驚して、顔をあげると。
薄眼を開けた純が俺を見ていた。

「っ!あぁぁぁぁ!!」

安心と喜びと、なんかもうよく分からない感情が入り混じって奇声を上げてしまう。
抱き着こうとしたら、それは片手で制された。

「馬鹿が、落ち着け」

さっきまで眠っていたとは思えないくらいクリアな声が俺を椅子に座らせる。
そして俺の奇声で、お医者さんが飛んできた。

痛みは無いかとか、純がそんな事を訊かれている間、俺は待てを言い渡された犬のようで。
早く純と話したい。うずうず。


「もう暫くは安静にしてくださいね」

そう言って病室を出て行ったお医者さんの後ろ姿を確認して、純に抱き着く。
病院特有の消毒液みたいな匂いのする服なのに、どこか純の匂いを感じて、肩首に顔をぐりぐりしてしまう。

生きてる。

この世界に来て2度目の、この感覚。
ヒシヒシと生の喜びを感じていたら、力強く頭を掴まれて、身体を引き剥がされる。

「離せ、馬鹿」

傷口の痛みからか、涙目になった純が可愛い。でも口から出るのは強気な言葉。
再度ハグを強要しようとすると、拳をもって制された。ぐすん。

ひと通り喜びを表現しきったところで、純が口を開いた。


「仕事サボってんだってな」
「な、なんでっ!?」
「さっき聞こえた」
「誰だそんなこと言ったの!」
「誰でもいいだろ。それより仕事しろ」
「そんなの、出来る訳ないじゃん」
「しろ。プロのアイドルだろ、お前」
「それはー」
「…まぁ俺のせいなんだよな」
「あー…」

強気に出たと思えば突然引く、そんな純にかける言葉も見当たらなくて、ただ歯切れの悪い返しをしてしまう。
それを知ってか知らずか。純は困ったように笑うから、なんか泣きそうになる。


「いきてて、よかった」

涙声になりながらそう言うと、純は驚いたように目を丸くする。

「厄介事が減って清々するかと思ったよ」
「そういう事!易々と言うな!!」

死ぬ事を連想するような口振りに思わず大声を上げてしまった。

「…そうか」

何処か遠い目をする純が居なくなってしまいそうで、その手をギュッと握る。
大丈夫。此処に居る。








「喜一くんをあんなに泣かせる事が出来るのは純ちゃんだけよ」

そう月宮先輩に言われて、喜一が泣き喚いた事を知る。

「ほんとーに大変だったんだからぁ」

唇に人差し指を当てながらそう言う月宮先輩は何処か楽しげで、俺、試されてる?

「まぁ腐れ縁ですけどね」
「そうかしら。腐っても縁でしょ?」
「はぁ」

月宮先輩は何を考えているのやら。
俺にはサッパリ。





暫くは安静!

樋崎。act.26。





左手のカゴに冷たく冷やした濡れタオルを詰め込んで、右手のカゴはドリンクを詰め込んで。

練習中なのを確認して、コートの近くにあるベンチに、それらを置く。
少し乱雑になったのは目を瞑って欲しい。
それから、さっきの休憩で使ったタオルを回収して早々とコートの側を離れる。



「そんな逃げなくてもいいのにね」

幸村さんがそんな事を言ってたなんて知らない。



わたしは、マネージャーではないけど、お手伝いをすると、ほぼマネージャーみたいなものだけど、雑用を引き受けた。
条件は、可能な限り部員との接触は避ける事。
またいつ発作を起こすか分からないので、ストレスは少ない方がいい。
それを部長である幸村さんは受け入れてくれて、他の部員の人たちも異論はないと、晴れてわたしは庭球部の雑用係になった。

庭球部を囲んで応援していた壁の人たちも、雑用ならと大目に見てくれるらしい。
マネージャーにでもなろうものなら、フルボッコも有り得たんだろうな。怖いなぁ。
現に中田さんの件もあったし。




「樋崎。もう終わるぞ」
「あ、はい。お先にどうぞ」
「そういう訳にはいかない」
「その言葉、そっくりお返しします」
「…」

柳さんはどうにかして、部活後のミーティングにわたしを呼びたがるのだけど、いつもこんな感じでお断りしている。

わたしがやる事は決まっているから。

最後に、ボールの数を数えてわたしの仕事は終わる。
大御所の庭球部だから、ボールの数も半端無いけどそこまでやってこその雑用だ。
数を数え終わる頃には、ミーティングも終わって帰宅し始める部員たち。

最後に、柳さんが部室の戸締りをして、終わり。
今日もボール数えが間に合って良かった。と思って着替え用に借りている空き部室を出ると、3強がわたしを待っていた。
出来るだけ接触は、とはいうものの、この3人に勝てた試しはない。

「遅いから送っていく」

そう言ったのは真田さんだった。
それには幸村さんも柳さんも賛成してくれて、校門で2人と別れる。
2人はわたしを見送りたいと、よく分からない事をいうのだ。

真田さんはわたしの体調を気遣ってくれる。
ドリンクの味が良かったとか、今日は濡れタオルの冷たさが足りなかったとか、そういうアドバイスもくれる。
とは言え、強くは言えないのだろう。
言葉を選ぶように、ゆっくり話してくれる。

「足りない事があったら言ってください」

とは常日頃言ってるのだけど、アドバイスのほかに言われた事はない。
唯一言われた事と言えば、ボールを数えるのが早いと、それだけだった。


「…ありがとうございました」

家に着いて、真田さんにお礼を言うと、真田さんも決まってこう言う。

「こちらこそ、礼を言う」

それに小さく笑って。

「お疲れ様でした。また明日もよろしくお願いします」
「あぁ、それではちゃんと身体を休めるんだぞ」
「はい」

ニコリと笑えば、安心したように背を向けて歩き出す真田さん。
その背中が見えなくなるまで見送るのが、わたしの日課。





雑用!

棗。帰国した君と。



抱き締めれば、身を固くする。
漸く芽生えたらしい警戒心に苦笑い。



一時帰国した俺は、メンバーとは別に日にちを取って故郷を懐かしんだ。
その相棒として選んだのは、誰でもない棗だった。

というか。
故郷というより、棗との時間が欲しかった。
中学を出てすぐに渡米した俺は棗とまともに話す事もなかったからな。

カフェっちゅーお洒落なもんもない地元は、何処といって行く場所もなく、どちらともなく、母校の中学に足を向けていた。


「なんで、あんなDVD送ったの?」

先に口を開いたんは棗だった。
あんなDVDとは、棗が演奏してる映像のヤツやろ。

「なんで、て。決まっとるやろ」
「分かんない」
「自分の実力知らしめたかってん」
「もう、いい迷惑だよ」

あれから、暫く英二のバンドメンバーとギクシャクしたと口を尖らせる。
俺としてはしてやったり、や。
棗が男と仲良うしとるなんて嬉しくない。
…ギリ、英二までやな。アイツは阿呆やからええねん。

「まぁ、今でもやっとるんやから、ええタイミングやったろ」
「…内緒にしてたのに」
「友達やのに隠し事かいな」
「ともだち…かなぁ?」

どこか自信なさげに呟いた棗。
コイツはいつもそうや。相手の好意に気付かへん。
どう見ても、英二を始め他の面子も棗に興味津々やろ。



中学まで歩いて、内緒話をするかのように、非常階段に身を潜める。
教師や生徒に見つかったら面倒やからな。
非常階段は中学の頃、棗との会話の場でもあった。ええ思い出や。

そこで、気付いた訳ちゃうけど。

「棗、丸ぅなったな」
「菅野くんこそ」
「その、苗字呼び止めん?」
「じゃぁなんて?」
「七生、でええ」
「ななおくん」

確認するように呟くのが可愛くて、思わず棗を壁に追いやって、抱き締めとった。
後ろは壁やから、逃げ場はない。
最初は意味が分からなかったみたいやけど、暫くそのまま抱き締めとったら、慌てたように身を捩りだした。

「ちょ、なに?ね?」
「ちょぉ黙っとってくれん?」
「だ、だって…」
「棗」
「…うぅ」


大人しくなった棗をこれでもかと力を入れて抱き締めた。折れてしまいそうな身体の細さに驚いたけど、今は俺の気持ちのが優先や。


「隙だらけやで」


そう言って身体は解放したが、今度は棗の顔の横に手をついて、やはり逃げ場を無くす。
抵抗するかのように俺の肩を押し返そうと触れた場所から熱を持つ。
相当恥ずかしいのか、表情をなかなか変えへん棗が耳まで真っ赤や。

下を向いた顔。その顎を掬って上を向かせる。
涙目。
堪え切れず、キスをした。
触れるだけやけどな。
それに、目を丸くした棗は恥ずかしさを隠すように、俺の胸を叩いた。


…なんやろう、この可愛え生き物は。



それから、暫く会話をするでもなく階段に座って空を見上げる。
ただし、俺は棗の手を握っていた。





好きが加速する。
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