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純。三次創作33。



「キミ、綺麗な顔してるね」
「あ、りがとうございます」


美風先輩が突然そう言ってきたので、驚いて思わずどもった。

「照れないんだ?」
「あー、いやお世辞でも嬉しいです」

ん?美風先輩は照れたり、そういうのをご所望だったのかな。
残念ながら、お世辞と分かっていれば驚きはするけど、照れることはあまりない。

お世辞じゃないんだけどな、と溜息を吐かれて。もしかして俺試されてる?ってなる。

「そういう美風先輩も綺麗じゃないですか」
「そう?」
「照れないんですね?」
「…まぁね」


言われ慣れてる感!!
完全な負けである。
なので。


「喜一に言われたら照れるんですかね?」
「え?」
「あぁいや…」
「そうだね。純も喜一狙いなの?」
「いえ、ただの幼馴染ですから」
「そう」
「美風先輩は喜一狙いなんですか?」
「相性が良くてね」


敢えて、何の、とは聞き返さない。
うん、分かってる。タラシのアイツのことだからね。

「純は平気なの?」
「え?いつか刺されるぞってくらいにしか考えてないです」
「ふっ、なにそれ」

美風先輩の表情が緩んで、ひと安心。
あんまり派手に遊ぶと痛い目に遭うぞとは常日頃言ってはいたけど、一向に止める気配はない。
もう、知らん。

「美風先輩は笑ってた方が魅力的ですよ」
「なに?口説き文句?」
「いえ、思ったまでです」

そうニコリと笑うと、今度は口を尖らせた美風先輩。

「笑えば可愛いのは純も一緒だよ」
「格好いいの方が嬉しいんですけどね」
「女装しててなにを」
「あーあー、それは仕事の一環なので」
「ふふっ」

笑って、美風先輩は仕事の時間だと、その場を後にした。


「綺麗」と「可愛い」。

純。三次創作32。



「じゅーん」
「人を六月みたいに呼ぶな」
「えー、でもぉ」
「全っ然可愛くないから」
「純、厳しいー。いつからそんな子になったの」
「元々だろ」
「喜一泣いちゃうよ」
「勝手に泣いてろ。そしてアイドル勢に慰めてもらえ」
「な、親友がそこまで言う!?」
「親友だから言うんじゃね?」


楽屋に遊びに行ったら、純が冷たい。
でも、最後の「親友」ってワードでちょっと気分上がった。ふへへ。
最近、瑛二くんにばかり立ち位置取られてて、なんだか面白くなかった。
でも久々でもこうやってじゃれ合えるってよくない?いやホント、瑛二くんに俺のポジション取られそうだったから、不安で仕方なかったんだけど。
まだ、というかずっと、純の隣は俺がいい。もっと言えば純の全部が欲しい。肉体的にも。
そんな事を考えていたら、不審そうに俺を見詰める純の目。冷たい…。

「よからぬ事を考えてる時の顔だな」
「そんな事ないって」

へらりと笑ったけど、冷や汗が。
こういう時、純は鋭いから困るんだよな。


「純さーん」

冷や汗を誤魔化していると、ドアがノックされて、純のモデル仲間の子が入ってきた。
…派手だ。

「Kさん。どうしたんですか?」
「今度、髪色変えようと思ってるんですけどぉ、何色がいいかなぁって思って」

俺が居る事はガン無視だ。
Kさんと呼ばれた人は俺の存在にすら気付いてない可能性がある。

「あー、俺初めて会った時のピンクとブルー好きでしたよ」

参考にならないけど。
と純が笑う。その笑顔も、全部俺に向けて欲しい。

「ピンク票多いんですよー」
「似合ってるって事じゃないですか?」


ねぇ、俺も混ぜて、とは思わない。
俺だけ見て。独占欲が顔を出す。

純。三次創作31。




女装男子の素顔。

そんな見出しの雑誌の巻頭を飾らせて頂く事になりました。
俺、女装男子になったつもりはなかったんだけどな。事務所の方針だから仕方ないか。


スタジオで、上裸の俺。
カメラマンさんの言う通りにポージングして、ふと思う。
俺って女装の方が撮影回数多くね?
素の俺に興味持つ人なんているのだろうか?
「俺」に需要なんてあるのかな。
少しの不安は、スタジオ見学に来てた男装女子モデル仲間のキャッキャという声のおかげで掻き消えた。

男バージョンの俺は、撮影が終わるとあっという間に、モデル仲間に囲まれて、格好良かったよ!とお褒めの言葉を頂いた。
そして何故か腹筋を触られた。
確かに鍛えてない事ないので薄っすら腹筋は割れている。
「案外筋肉質なんだよねー」
と、Aさんにさわさわと触られて擽ったい。

さぁさぁ時間が無いよ!ということで、次は女装バージョンの準備に取り掛かる。
フリッフリのワンピースに苦笑い。
そのワンピースに合わせて、ドールメイクをしていく。つけまは二重。ぷっくりと艶々の唇に、濃過ぎないくらいのチーク。

ここにきて気づいたのだけど、俺ここ最近でメイクの技術向上してない?

そして出来上がった女装男子、ドール風。

モデル仲間が息を飲んだのが分かった。
それは俺がAさんやRさんを見た時と同じだった。

この後、撮影が入っていたらしいモデル仲間も、準備を始めていて、終わった人から他スタジオに移動する前に俺とのツーショットを撮っていくのだった。



後々、雑誌が発売になって、モデル仲間があの時撮った写真をSNSにアップするのだった。
売れ行きは上々。
何故かアイドル勢まで雑誌を購入するという、謎現象も起きたけど。

自分で言うのもあれだが、なかなかキレイにメイクができるようになった。
だからこそ、今回の「女装男子の素顔」という企画が面白そうだったのだ。


これからも女装男子の仕事は絶えないんだろうなぁ?

純。三次創作30。



「わー!!可愛いっ!」

今日は仕事が午後からだったんだけど、暇だったので朝からスタジオにお邪魔していた。
そこで遭遇したのは派手モデルの筆頭であるKさん。
久しぶりにお会いするので、それはもう丁寧に挨拶させてもらった。
Kさんはそんなの気にしない感じで、友好的に接してくれる。

ふと。

「ネイル、剥がれてません?」
「え?」

思った事を口にしてしまった。
ヤバい。やっちゃったよ。
そう後悔していると、Kさんは驚いたように自身のネイルと俺の顔を交互に見た。

「本当だー!よく気付いたね!」
「あ、まぁ」

美容に関しては細かい事を気にしてしまう、とは言えず、頬を掻く。

「そういえば成瀬くん、自分でメイクするって聞いてたけど」
「はい、できる限度がありますけど」
「自己流?」
「いえ、この業界に入る前に専門学校に」
「あーそうなんだ」

じゃぁさー、とKさんは笑みを浮かべる。


そしてこうなる。


俺はKさんに頼まれて、彼女のネイルを直すことになった。
派手モデルさんなので、彼女の持つマニキュアやネイルパーツも派手派手だ。
蛍光ペン。第一印象はそうだった。

Kさん、というか。女性陣の楽屋にお邪魔して、テーブルを挟んでKさんの正面に座る。

一旦、今のネイルを落として、ベースを塗って相談しながらパーツを選んでいく。
他の指のネイルとのバランスも考えて、イチゴ等のフルーツでまとめる事にした。
女の子の手に触れるなんてなかなか無い機会に、緊張するのだけど、それを助長するように他のモデルさん達も何事かと寄ってくるから、手の震えを誤魔化すのに必死だった。

なんとか、トップコートを塗って終わり。

はぁ、と止め気味だった呼吸をすると、どれどれとKさんを囲むように他のモデルさん達が集まって来ていた。

「わー!可愛いっ!!」

どうやら気に入ってもらえたらしい。
安堵の溜息を吐くと、後ろから抱擁魔のAさんが抱きついてきた。
振り向かずとも分かるようになった自分…相当だな。

「Kちゃんばっかりズルい!」
「えーっと、機会があったらAさんのもやりますから」

と、Aさんの腕を解き、すり抜ける。
するとAさんは酷く嬉しそうで、約束ねっ!と小指を絡められる。

「純くんと一緒の時にオソロとかよくない?」

それは完全に俺が女装する時の事だ…。
嬉しそうなので水を差すのも気が引けて、こてんと首を傾げてみる。

「ていうか、純くんの撮影って午後からじゃなかったっけ?」
「する事なかったんで来ちゃいました」
「なにそれ可愛い」

何が可愛いのか分からないが、Aさんに手を引かれてスタジオに連れて行かれる。
スタジオ待機していた男装モデルさん達は俺が「男」の格好である事が珍しくて嬉しいらしい。

「両刀っていいよねぇ」
「それなんか語弊ありません?」
「そうかなぁ?」

さっきネイルを仕上げたKさんが撮影に入っていて、笑顔でこっちに手を振ってくれた。
軽く手を上げて返すと、さっきにも増して笑顔でカメラの前に立つ。
空気の切り替えがすごい。

そんな環境に身を置いてるんだよな。




改めて身が締まる思い。

純。三次創作29。



俺は気まずい。
喜一が、瑛二さんの前でセクハラまがいのスキンシップを取ってくるのだ。
瑛二さんとは、その、ごにょごにょした関係になってしまった。
俺の気持ちは総スルーで、ご機嫌な瑛二さん。
でも喜一が絡むと、一変、不機嫌が顔に出るのだ。
喜一は馬鹿だから気付いてないと思うけど、俺としてはとても気まずい。
ついでに言えば喜一と瑛一さんは肉体関係を持ってる訳で。
兄弟同然で育ってきた(らしい)俺たちとしてはすごく、複雑である。

その代わり、というか。
喜一は瑛一さんの家に行き、瑛二さんは俺ん家に来る。

まだアイドル群が、俺にいい顔をしないのも分かっていたし、喜一と距離を置くにはちょうどいいのかもしれない。



今日も、瑛二さんは俺の家に来ていた。
恒例のココナッツ珈琲を淹れながら、瑛二さんは買い込んだお菓子を開封していた。
…成人したらこれが酒に変わって、飲んだくれるのだろうか。

「やっぱりお菓子には普通の珈琲がいいですね」
「そんな事ないですよ!」

再度、普通の珈琲を淹れようと腰を上げると、その腕を掴まれて元居たラグの上に逆戻りだ。
そのノリで、瑛二さんは指を絡ませて来た。

「俺は純さんとこうやってられるだけで幸せです」

おぉっふ。殺し文句だね。殺されないけど。
こてんと、首を傾げると更にギュッと指に力が加えられる。


「そういえばこの前、大和がちょっかい出して来たみたいですけど」
「あぁ、また脇腹を触らせそうになりまひた」
「(後で締めとこう…)」
「今物騒なこと考えたよね」
「そんなことないですよ」

爽やかな笑顔が怖い。

「平和に行きましょう…」

俺はそれしか言えなかった。
ナンノコトカナ?と瑛二さんは首を傾げるけど、あざとさが怖い。

ふと、ソファから俺の隣、ラグに座った瑛二さんは、俺と向き合うと、コツンと額を合わせる。

「お願いですから、俺の手の届かない所に行かないでください」
「なにそれ」
「まんまの意味です」
「喜一にも言われたんだよね」
「…また喜一さんの話ですか」

一気に不機嫌になる瑛二さん。
ごめんごめん、と眉を下げると、おもむろに、頭を撫でられる。






「俺は純さんを他の誰に渡したくないんです」
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