「ナツちゃんてさー
なんだかんだで平介には甘いよね」
佐藤くんはつまらなそうに、そう言った。
「甘い」とはどういう事だろう?
その怪訝さが表情に出たみたいで、佐藤くんは頬を膨らませて私の頬を摘んでくる。
地味に痛い。
でも加減されてるのは分かって、へにゃりと変な笑みを浮かべてしまった。
「だってこの前もデザート持ってきてたでしょ」
そう。
私はちょこちょこ、お菓子作り会の時にスイーツを持ってくる。
そもそもその日に作るんだから要らないと言われればそこまでなんだけど、お世話になってる平介くんや、あっくん、ママ様が食べてくれたらいいなぁと思って、途中寄るスーパーなんかで買ってしまう。
それが、「平介くん」宛だと、佐藤くんはご立腹のようだ。
「でも、私が作ったの一番に食べてくれるのは佐藤くんだよ?」
「っ!そ、そーだけどさー!!」
こてん、と首を傾げれば、佐藤くんは赤くなった顔を右手で覆う。
なんで照れるの?
顔を近づけて佐藤くんを覗き込もうとすると、左手で私の肩を押し退けてくる。なので、覗き込む事は叶わなかった。
「ねぇ、ナツちゃん」
「はい?」
「それって計算なの?」
「計算?」
「うわ、天然なんだ」
敵わないなぁ、と佐藤くんは1人呟くんだけど、私には意味が分からない。
…計算って、、、「あざとい」とかそういう事なのかな。
断じて。私はそんなつもりはない。
コホン、と咳払いをした佐藤くん。
「今度はさ、俺の為に手料理覚えてほしいな」
「うん」
「…いやだから、さ」
そうじゃないんだよぉ、と。
佐藤くんは頭を抱えた。
「スイーツもいいけど、手料理の方が役に立つもんね」
「だーかーらー!」
まだまだ一方通行。