「対策委員でーす」
サークルのはじめには、連絡事項のコーナー。対策委員は初心者講習会に向けて会議に次ぐ会議。日々決まったことを逐一報告していく。みんなも気になってることだしね。
「初心者講習会ですけど、ミキサー講師はいっちー先輩にお願いすることになりました。いっちー先輩改めてよろしくお願いします」
「よろしくー」
「アナウンサー講師、インフォに関しては青女のヒビキ先輩、総合部門に関しては現在調整中です。有力候補の先輩にこれから交渉して、来週には一本化したいです」
以上! と連絡を切って、これから始めることはと言えば、戦いのフィールドをセッティングすること。
午後2時、少し遅めの昼食。うどんに薬味を大量に入れながら、軽く咳をひとつ。
伊東はいつもとは違うタイプの風邪を患って珍しく寝込んでいた。少し寝たらちょっとは楽になって、万全ではないものの今では普通にバイトも出来るまでに回復したようだ。
「薬味増し最高」
「よかったな」
通い始めて3年目になるのに最近知ったばかりの薬味増しサービスの恩恵を受けながら、いつもよりもさらに多い気持ち増し増しくらいの葱が乗ったかき揚げうどん。
風邪にはネギがいいのは常識だ、などと言いながらシャキシャキと葱を食べ進めている。いつになったらうどんに辿り着けるのかはわからない。
「戸締まりよし、機材はどうだ?」
「良しです」
「じゃあ、帰るか」
暦の上では夏になっている。日照時間も大分のびてきたように思う。現在時刻は午後4時過ぎ。前々回の収録で2時間超というやらかしをした俺がサークル室に着いた時間にもなっていない。
「うわっ」
「すごい風ですね」
ビョオッと音を立てて、ものすごい勢いで風が抜ける。授業が終わってサークル室へ行こうと裏駐車場を抜けようとしていたうちとノサカは、条件反射で目を守る。
すると、目の前にはひらひらと、何か四角い物が飛んでくるじゃないか。何となくそれをキャッチしてみれば、ラミネート加工された紙には「春」とだけ大きく書かれていた。
「対策委員です。さて、野坂の遅刻がたった15分という奇跡を生かして会議を進めましょう」
さて、俺がいようがいまいが議事進行は委員長の果林が主に進める対策委員だ。これは、進行役は毎回同じ方が落ち着くしお前は大事なところでビシッと決めてくれればそれでいいと対策委員のみんなから諦められた結果だ。
「前回までのおさらい。初心者講習会の講習内容については粗方まとまったよね。インターフェイスにおける学生ラジオについてと、技術的な基礎。ラジオとステージ共通のポイントもあるといいねみたいなこと。実際の番組を見せつつ。日付は来月11日、場所は星大。月末にイベントを控えてる青女が今ちょっと辛いってことなんで、啓子さんのフォローをしつつ」