年末になると、さすがに俺も実家に戻ってそれらしく過ごすことになる(慧梨夏も遠征していて留守にしているし)。俺は京子さんからのおつかいで浅浦家へ。腕まくりをして気合の入ったパパさんが、来る大晦日に向けた準備をしているところだった。
「パパさーん、これ、京子さんから。例のヤツだって言えばわかるって言ってたけど」
「あー、ありがとね。京子さんにもよろしく言っといて」
「はーい」
「あっそうだ。カズ、明日の蕎麦だけど上に乗っける天ぷらの具、伊東家の分みんなに聞いといてね。なんなら今から雅弘と買い物に行って来てくれれば助かるけど」
「すみませんお母さま、お世話になります」
「どうぞどうぞ! さ、上がって! フミー、こーた君来たわよー」
「あっ、こちら、2日間お世話になりますのでよろしければ」
「あら、そんないいのに。ありがとう」
寝起きでまだ頭がぼーっとする。ペタペタと階段を下りれば玄関先で母さんとこーたがきゃいきゃいとお喋りをしているではないか。こーたは親世代の人とは仲良くなるのが早いと言っていたけど、うちの母さんにも謎に気に入られてるんだよなあ。
今日こーたがうちに来たのは、例によって弟カップル絡みでこーた以外の家族が旅行に出てしまったからだ。1人でも過ごせるけど、元々遊ぶ予定が入っていたのだから食事も一緒に、などとあれよあれよと話が進んだのだ。