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【SSS】三日坊主の雑巾がけ

 どたどたと、廊下を走るような音で目覚める。今日も冷えヤすねェ。これならマイナス4〜5度ってトコすかね。枕元の目覚まし時計に目をやると、時刻は朝の6時過ぎ。こんな時間からどたどた走るような用事はそうそうないはずなんすケド。
 冷えた床がすっかり目を覚まさせる。何がどたどた言ってるんだと部屋から出てみれば、そこには古き良き田舎の原風景……や、田舎の原風景でもなかったスわ。昔の学校スかね、雑巾がけなんて。

「りっちゃんおはよう」
「……はよーごぜーやす。つか、朝ッぱらから何やってンすか」
「掃除だよ」
「や、それは見りャわかるンすけど、どうして掃除?」
「お母さんが朝ごはん作ってたから、何か手伝うことはないかって聞いたら何もないって言ってたんだ。でも、しばらくお世話になるから掃除をさせてほしいって言ったら雑巾の場所を教えてくれたんだ!」
「へェー……そーなんスかァー……」


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【SSS】ご挨拶への下調べ

「ただいまー」
「おかえりなさい茉莉奈。待ってたんですよ」
「えっ、どしたの実苑」

 買い物から帰ると、どうやら私のことを待っていたらしい実苑が玄関先まで出迎えてくれる。手には煌々と光るスマートフォン。実苑とは親の再婚という都合で姉弟になったばかりでまだ1年も経っていない。それでもって、実苑は一人暮らしをしているから家で一緒になると少し変な感じがする。


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【SSS】僕とあなたの世界の温度差

「聞いてよたまちゃん酷い話なんだよ」
「どうしたのアヤちゃん」

 冬のコミフェジャンル一覧と書かれたインターネットのページを前に、アヤさんが悲痛な面持ち。俺は紅茶をアヤさんと慧梨夏に運びながら、聞いてもわからないだろうその話を何となく耳に入れる。

「前にさ、ちょっと覗かせてもらってるバンドの話したでしょ?」
「ああ、あの相関図の」


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【SSS】近距離遠距離越えてく飛距離

 それじゃあかんぱーいと宴が始まって小一時間ほどが経っただろうか、インターフェイス4年生の忘年会はすっかりあったまっていた。4年にもなるとやれ就職はどうしたなどという話が主だってくるのはご愛敬。
 今日の幹事は毎度おなじみ向島のマーだ。と言うかこんな集まりをやろうなんていう発想を持つ奴はウチの学年じゃマーくらいしかいない。3年生にも洋平くらいしかそれを実行に移そうという奴はいないらしいけど。
 マーはこの辺じゃちょいちょい有名な印刷系の会社にスパッと就職を決め、あとは綺麗なお姉さんと出会うための冷やかし就活を続けていたそうだ。ただ、お麻里様が言うにはマーは就職より卒業の方が危ないらしい。

「マーさんまだ卒論0文字なんでしょ? せっかくいいトコに就職決めたのに卒業出来なきゃ意味ないじゃん」
「まーまー何とかなるだろって」
「みちゃこからもマーさんに何か言ってあげてよ」
「がんばれー」
「ぬるっ」


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【SSS】目指す心の着地点

 いつものようにいつもの店の、いつもの席で飯を食っていると、変わった奴から電話がかかってきた。ちょうど口の中のものを飲み込むところだったし、急いで飲み込み水を飲む。

「はいもしもし」
『あー、朝霞か。お前今大丈夫か』
「高崎。突然どうした。外で飯食ってるけど、まあ大丈夫だ」

 高崎とはこないだ戸田伝いに酒を飲む機会があったけど、普段はそこまで絡む機会がある方ではない。やっぱ絡む機会が多いのは定例会の連中だ。通話が始まると、店員さんがこちらに興味を持ち始める。


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