「よーしお前ら、食え!」
「わー、ぐつぐつしておいしそーですねー!」
目の前には、ぐつぐつと煮えたぎる鍋。腕まくりをして得意気にしている春山さんの自信作だ。普段は横暴でムチャクチャな春山さんだが、料理は普通に美味い物を作ると認めざるを得ない。
変わり種というワケではなくごく普通の寄せ鍋だが、そこは春山さんのこだわりなのか市販の鍋つゆのような物ではなく自分で味付けをしていた。具も至って普通だ。
「ユースケ何食べる? よそおうか」
「いや、自分でやる」
「そう?」
「宇部、お前今日これから暇か?」
「ええ。どうかしたの」
「えっと、飲みに行かないか」
「いいわよ」
山口の奴、何が「朝霞クン今日メグちゃん連れて店に来てね」だ。テメーが何かやりてーならテメーが俺と宇部に声をかけりゃいい話なのに何で俺に宇部を連れて来させるんだ。
「洋平の店?」
「ああ。……まだ2時半過ぎか。店が開くまで時間潰すか」