「ユースケ〜、助けて〜」
事務所の外から、へろへろとしたか細い声が聞こえて来る。オレのことを下の名で呼ぶのは烏丸かブルースプリングの方で懐かれている綾瀬くらいのもので、これは烏丸の声だろう。何が起こったのかと外を覗いてみると、烏丸は大きな袋で両手を塞がれていてドアを開けられないようだった。
「これでいいか」
「ありがとう。はー、重かった」
「しかし、なんだその荷物は」
「あ、これ? 星ヶ丘大学で農業やってる友達がね、サツマイモをくれたんだよ。俺がバイトを始めて友達も出来たって話したら、「みんなにも食べてもろてやー」って言って」
「しかし、ジャガイモが捌け切らんのに今度はサツマイモか」
「サトイモも育ててるって言ってたけど」
「センターには持って来てくれるなよ」
「さとちゃん、ちょっといいかな」
「はい、紗希先輩どうかしましたか?」
「学祭の次の週、大体の大学さんの学祭があるでしょ?」
「そうですね。ウチと青敬さん以外ですね」
「向島さんにお礼と差し入れを兼ねて何か渡したいんだけど、良かったらさとちゃんにクッキーを焼いて欲しいなと思って」
「そんなことだったらいくらでも焼きますよ」
ウチの学祭の準備は滞りなく進んでいた。ステージの内容も道具類も順調。それから喫茶の方もこれ以上ないほど順調な進み具合。さとちゃんの衣装も完璧。だから徹夜をする必要もなかったし、無理のない感じで活動出来ていて。