「うわっ、何だいきなり」
「トリックオアトリ〜ト」
白い袋のようなお化けの衣装を被った長野っちが、サークル室にやってきた高ピーを驚かせている。今日は火曜日で、長野っちは単位交換制度っていうのを利用して緑大の授業を受けに来ている。何でも、その筋の凄い先生がいるんだってね。俺はよくわかんないけど。
俺やタカシがサークル室に来る前から長野っちはお化けの衣装を被ってイスの上に正座して待っていた。だけど、長野っちの狙いはあくまで高ピー。ターゲットじゃない人間が来たところで微動だにせず言葉を発することもなく。逆にそれが不気味さを増してたんだけど。
「何してやがる」
「着いたぞ」
「お邪魔しました」
「今何時だ?」
「7時過ぎかな」
「じゃあ帰って二度寝出来るな」
かけていたアラームより早く目覚めて、ぐだぐだする理由もなかったから予定より早く帰ることにした。通勤や通学で交通量が増える前、早朝のタンデム。昨日の行きと同じように、高崎のビッグスクーターの後ろに乗って来て。
うちのマンションの駐車場を、猫が歩いている。向かいの大きな一軒家から女の子が出て来て、ご飯なんだーと言いながらお皿を地面に置く。すると、猫は家の方に歩いて行く。こんな光景も、早朝だから見られるのだろう。