丸めるぞ。そう声がかかればわかりましたと赴くその部屋。夜は大分過ごしやすくなったと思う。クーラーではなく網戸で十分。床には缶チューハイと熱源。
たこのないたこ焼きをたこ焼きと呼んでいいものかどうかは未だによくわからない。たこ焼き器に流し込まれた液に包まれるのは、ポークビッツを細切れにしたものやチーズなど。
「菜月先輩」
「どうした。ほら、手が止まってる」
「申し訳ございません。たこのないたこ焼きをたこ焼きと呼べるのかと考えていました」
「亜種みたいなことだろ、派生とか」
タコは高いんだ、察しろと言いながらも、その手は止まることなく動き、綺麗にたこ焼きの形を整えていくのだ。相当慣れている手をしている。