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【SSS】何を残し、育むか

「うわ、うまっ」
「バンちゃんサイコー!」
「ありがとー。俺も友達から教えてもらったんだー。簡単だし2人もやってみなよ」

 秋学期の授業が一段落して、帰省してきた。ひょんなことから今年の夏に再会した友達とうだうだ集まる年の暮れ。俺の実家なのに支度をするのがバンデンなのはご愛敬として、とにかく愉快なメンツの鍋パーティーだ。

「今になって気付いたんだけど、薫くんの家族は?」
「父さんと母さんはクラシックコンサート、兄貴は学校、渚は塾じゃねーかな。受験生に盆正月はないとかニートは自由だなとか帰ってきて早々嫌味言われたっつーの。うるせえ趣味もなければ勉強に目的もねえクセにっつって」
「うわー。ロイド君、安定の兄弟仲の悪さだな」


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【SSS】バブリーな妄想は泡となる

「ねえ……たまちゃん……」
「アヤちゃん大丈夫?」
「大丈夫じゃないよ! 何これ! テロ!?」
「ちょっと体を張ればこれくらい楽勝ですよ」

 アヤちゃんに見せたのは、先日ノリと勢いで撮ったサンタクロース衣装での写真。ただのお遊びをコスプレが本職の人に見せるのはなかなか勇気が要るけど、見せたかったですよね。うちはともかく相方のクオリティですよ。

「カズさん超絶美少女! 尊い! 5000兆点! いくら積めば写真集出してもらえますか!? 5000兆円!?」


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【SSS】つなぎゆくもの

 こないだ、慧梨夏にプロポーズをしていい返事をもらえたまではよかった。いくら互いの家で公認だろうと、改まった挨拶はしなければならない。うちへのそれは何かすごいフランクな感じで済んでしまったけど、問題は宮林家への挨拶だ。
 慧梨夏のお母さんである千春さんは、某洋食屋でシェフとして働いている。結構流行っている店で、話を聞く度忙しそうだなと。そんな中でお休みの日に伺う予定を立てているのだけど。なかなか予定が合わないんだよなあ。

「うーん、何か手土産的な物とか」
「いいよ、うちも手ぶらだったんだし」
「ほら、うちの場合は何を今更みたいなトコが少なからずあるじゃんな。途中から結婚しますっていう挨拶じゃなくて女装ミスコンの報告みたいになってたし」
「ですね」
「俺が千春さんと会うのって、お前が京子さんと会うみたいな頻度じゃねーワケよ、わかるな」
「別にいつ行ったって歓迎してるんだから、変な気遣いはいいと思うけど」


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【SSS】掛け合いの形式

「ホントにめちゃ食うなー」
「米を食べないと食べたうちには入りません」
「ノサカ何ドヤ顔しとんの。こんなんを無芸大食ってゆーんや」
「くっ……ヒロめ好き勝手言いやがって! お前なんて留年してしまえ」
「ノサカてボクに対する脅し文句のパターンないよね」
「語彙力なんか付けさせなければよかった」

 今日はゼミの先輩である磐田先輩のお宅に招かれ、前原先輩やヒロといった面々で鍋パーティーが開かれている。今日で今年の授業は一段落したということで、明日のことなんか考えなくてもいい自由な大会となっている。
 磐田先輩は台所でせっせと準備をしてくれているし、いざ鍋の前に座っても、鍋のお世話をしてくださっている。圭斗先輩ほど美しい手際ではないけれど、磐田先輩の人柄もあってよりほっこりするような気がする。


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【SSS】悪夢の飛び出す後にあるのは

「や、夜間遅くに大変申し訳ございません……」
「いや、災難だったな」
「あの、急拵えですし高い物でもないのですが、よろしければどうぞ召し上がってください」
「何か、悪いな」
「いえ。急に転がり込ませていただくのに、手ぶらというワケにも」
「と言うか、どういう状況だったんだ? ヒロの課題に付き合うってのは聞いてたけど」

 12月25日、月曜日。俺は今年度最後のサークルが終わった後でヒロの課題に付き合わされていた。サークルに対するやる気には満ち溢れていたヒロだったけど、覚醒していたのはサークルだけ。授業に関してはいつも通りふらふら。課題もいくつ溜めこんでいたか。


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