シャワーをしてすぐに服を着ないのは姉弟だと思う。コイツが俺の部屋に転がり込んでくるのはさほど珍しいことではない。バスタオルを肩から羽織ってテレビを見るのも、よくあること。
「浅浦ぁー、何か飲むモン」
「勝手にしろ」
「はいはい」
別に何があったではないけど、不意に昔のことを思い出す。
しばらく誰も帰らないとわかっていた家。シャワーを浴びて飲み物を求める声には好きにどうぞと促した。文句を言いながら水を取り出して飲んでいたと思う。あれはもう5、6年ほど前になるか。
顔が似ている姉弟だ。弟のコイツに美弥子を見ることはないと言えば嘘になる。だけど、それは年に一度あるかないか。そもそも性格が全然違うし、コイツは美弥子以上に俺に対する遠慮がない。
「どうかしたか?」
「いや、別に」