「なーんでテメーがいるんだ、萩裕貴」
「すみません萩さん、戸田には萩さんのことを伏せて伝えてました。こら戸田、言葉に気をつけろ」
「いや、気にするな朝霞」
卒業式の後、いつものようにいつもの店で。今回は山口も純粋に飲み専で、店員としての仕事はしない(と言うか、大将がさせてくれなかったそうだ)。朝霞班と越谷さんという、流刑地の面々で。いつもと違うのは、そこに萩さんがいること。
萩さんが個人的に俺たちと顔を合わせて話がしたいと言ってくれたらしい。ただ、戸田は重度の幹部アレルギーだし、萩さんは流刑地送りにされた代の幹部ということもあっていつも以上に刺々しい。
「お前らよー、先輩を敬うっつー気持ちはどうした。えー?」
「もちろん先輩を敬う気持ちは持っていますが、それ以前に村井サンが卒業できてしまうという現実に理解が追いついていないだけですよ」
「圭斗テメー! それが先輩に対する態度かー!」
今日は向島大学卒業式。僕たち在校生もみんな集まって、卒業される先輩方をお見送りすることになっている。野坂も神崎が引きずってきてくれたし、集合時刻から20分以内に全員集合。MMP比では優秀な範囲だろう。
卒業生が出てくるまでの間に僕と菜月さんは4年生方に手渡す花束を買いに出かけたり、寄せ書きの色紙を完成させたりと忙しくしていた。麻里さんには血塗られたような……もとい、情熱的な赤い薔薇を入れようなどと話し合ったり。
4年生追いコンの時点でも聞いていたけど、改めて村井おじちゃんが卒業できるという現実に理解が追いついていない。村井サンは単位が限りなくギリギリだったはずだ。それでも何とかなるからこそ村井サンなのだろうけれども。