【新しい気功教室の流れを考える
】3
*前項の?の何処かで「体の構造/体壁系(動物性機能)と内臓系(植物性機能)」の話を入れる必要がある。
一日目・?
●すわり金魚の実習
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背骨の揺れの感覚は自らの内部の感覚であり、この内部の動きを体感す感覚を体性感覚と呼び、外部に向けられた五感(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚)などの体壁系に用いられる感覚と区別する。
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体性感覚には、運動の感覚、皮膚の感覚、体内の感覚の三種類があり、「すわり金魚」での背骨の揺れの感覚は、体性感覚の中の運動の感覚、中でも受動的に動かされている動き(運動)の感覚の体幹の練習であった。
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運動の感覚の中でも能動的な動きの感覚は、動かそうとする脳の働きが関与し、この能動的な意思の働きは、外部に働きかける体壁系の脳と同じ分野の脳の働きになり、脳の働きを消去させる取り組みの妨害になり、従って、体壁系の脳の働きを消去させていくためには「すわり金魚」による受動的な動きの感覚である背骨の揺れを体感することが有効になるのである。
タイトル
気功治療への道案内/八日目
本文
◆証の決め方
「今日は気功治療の中での中心的な課題である証の決め方を勉強しましょう。」
鈍よりした、それでいて時々、ザァーと強い雨を落とす梅雨空の中を歩いてきた二人と参議院選挙の話などをして、一段落ついた後、私が話し出すと、早速、佳与が口を開いた。
「脈診とは別なんですか?」
「脈診などで得られた情報を基にして、西洋医学で言えば病名にあたるものを決めていくんですが、それを証と呼んでいるんですよ。」
「病名とは別なんですよね?」
今度は茉奈だった。
「病名というよりは、治療方針といったところでしょうね。
東洋医学的な治療の柱は、どの経絡の気が虚していて、どの経絡に邪気が入っているか等を見つけて、虚した経絡には気を補って、邪気のある経絡からは邪気を取り除くというのが基本になりますので、それを決める訳で、その治療方針が証ということになるんですよね。」
「じゃあー」
と、茉奈がノートに目を落としながら鋭い質問を投げ掛けてきた。
「私の勝手な独学なんですが、例えば、食欲がないとか胃がもたれるなどという消化器系統の病は脾の変動、体がだるく節々が痛いのも脾の変動、色々と考え込んでしまい、不眠になっているのも脾の変動と考えられていて、これ、普通だと、内科とか整形外科とか心療内科とかというように別々のところに受診することになるんでしょうが、証として決める場合だと、脾の経絡を調えるみたいに、同じような治療になる場合もあるってことでしょうか?」
「ほう、よく勉強されましたね。」
私が言うと、佳与がキョトンとした顔を私に向けた。
「佳与さん、心配しなくても、茉奈さんが言ったようなことはまた後から勉強しますからね。」
私は佳与に笑って言ってから、証の決め方に話を進めた。
「これは鍼灸の方の理論なんですが、〔虚したるは其の母を補え〕というのがありましてね、五行での母を補いなさいということになっていて、実際にそうした方が効果があるんですよね。」
「母って何ですか?」
佳与が訊ねた。
「五行には、前に勉強しました相剋の関係以外に、相生関係というのがあってね、これを母子関係とも言い、木→火→土→金→水→木という具合に、木火土金水の順にエネルギーが伝わっていくという法則があるんですよ。
ですから、並んだ二つの関係で言えば、先が母になり、後ろが子ということになるんです。」
「すると、木と火なら、木が母で火が子になる訳ですね?」
佳与の言葉に併せて私はホワイトボードに次のように書いた。
母→子
肝木→心火
心火→脾土
脾土肺→金
肺金→腎水
腎水肝→木
「で、虚したるは素の母を補えとは、例えば、脾が虚している場合は、脾は土に当たりますから、その母である火、つまり心を補いなさいということですか?」
と、茉奈がボードを見ながら言った。
「まぁ、そんな感じなんですが、、その場合、心も虚していなければならないんですよね。」
私が言うと、佳与が首を傾げて訊いてきた。
「脾の母は心ですから、脾が虚の場合は心を補うんじゃないんですか?」
私は五行の図を描いてから説明した。
*図を参照
「脾が虚しているとしましょうか。
すると、相剋関係にある腎は実になっています。
さらに腎が実だと、その相剋の心は虚になり、虚の心から栄養をもらえない脾はますます虚していく訳で、この三角形のパターンの時に、治療方針としての証は〔脾虚証〕となって、脾自身も、その母である心も補うということになるんですね。」
「何だか難しいんだけれど、脾が虚でも〔脾虚証〕にならない場合があるってことですか?」
さすがの茉奈も首を捻った。
「脾が虚なのに心が実だとしましょうか。
すると、心の相剋である肺が虚になります。
そして肺が虚ですから、その相剋にある肝は実になり、それが脾を虚していき、肺→肝→脾の三角形が出来上がり、その場合は脾は母で肺が子になりますよね?」
「はい。」
二人は同時に、しかしまだよくわからないというような声で返事をした。
「ですから、脾臥弱い場合でも、心が弱くて脾虚証になる場合もあれば、肺が弱くて、肺虚証になる場合もあるってことなんです。」
「そうか、だから、肺と心を比較して診たり、脾と肝を比較したりするんだ!」
そう佳与が高い声を上げたが、まだ理解しているとは感じられなかった。
「先生、確認なんですが…。」
と、茉奈が軽く手を挙げた。
「ということは、証というのは、虚のところが二つ並んでいる時に、その子どもの方の名前を取って、何々証という具合に付けるということですか?」
「そういうことになりますね。
そして、最初にも言いましたが、証は治療方針ですから、脾虚証なら、脾経と心経をに気を補って、その相剋の腎の気を瀉すということになるんですね。」
「私、五行の木火土金水と肝心脾肺腎をまだしっかり覚えていませんし、寸関尺の配当ですか、それもまだあやふやなので、帰ってからしっかりわかるノートを作ります。」
と、佳与が言った。
「私もよ」
と、茉奈が佳与を労るように言った。
「ここを乗り越えれば、後はラクですからね。」
私は二人を安心させるように言葉を掛けて、二人の娘を送り出したのである。