2019-1-17 13:36
凪
燗酔の帳の狭間で夢か幻
幾つかの悩みを抱えた
遠い昔の私を見た
湾を抜けて海へ出て
理想を適えるべく対岸へ
漕ぎ出した先
酔いが醒める無風の世界
帆が張れずとも
手を広げ指先一つで良い
吹き抜ける風を捉えられたなら
何処まで行けるだろう
波一つ無い水面の上で
流れることの無い
雲を見詰めていると
記憶を飛ばした
かりそめに発した何気ない
言の葉の一枚が落ちる間で
またその指の細さを思い出す
忽然と
頬を撫でる冬の風に
慌てて
君の名前を乗せて見送る
またいつか会えますように