現パロ「きみがため」より、武田道場2名の阿呆な過去。
夢じゃないのでオープン記述。都合により呼称は2以前の仕様です。
「はっ…ししししまったァ!!」
突然、真田幸村が頭をかかえたような声を上げた。
あの生真面目で熱血な武田道場の秘蔵っ子は、今ごろ居間でぬくぬくくつろいでいるはずだ。
台所にいた佐助はいち早く動いていた。
(何やったか知らないけど、叱るにしてもごまかすにしても…っとにかく状況把握して手を打たないと!!)
悲しいかな、事後処理体質。もはや門弟なんだか役目なんだか世話係なんだか自分でもわからない。
後頭部の上方から他人事のように俯瞰する自身の存在を感じつつ、佐助は台所から瞬く間に駆けつけて、障子を開け放ち怒鳴り込んだ。
「ちょっと旦那! いったい何やらかしたの!?」
「佐助! 大丈夫だ、大事ない。ただ……」
「ただ?」
「その……タイミングを誤ったのだ。この寒さで口と手が仲違いをしたらしくてな。」
重々しく語りながら幸村がふり返る。
その顎から胸元にかけて、プリンがこぼれて不恰好な姿をさらしていた。
「……素直にこぼしたって言いなさいよ。アンタ何を口と手のせいにしてんの、どっちも旦那の一部でしょーが」
至って真面目になされた言い訳に、ツッコまずにはいられない。
ごまかしきれないと悟った幸村は、小さく「う、うむ」とうなずいてシュンとした。
「すまぬ。佐助」
「ああもう! 反省するより先にまずこぼしたプリンを拾って拭く!!」
言うが早いか、佐助は頭の三角巾をはずして走り回った。
室内のティッシュ箱を幸村に手渡し、ゴミ箱を引き寄せて本人に後始末をさせている間、自分は別室に走って幸村の着替えを箪笥から引っ張りだして戻ってくる。
ちなみに、古式ゆかしき武田道場にはクローゼットなるものは存在していなかった。あればもっと整理しやすそうなんだけどねえ……などとつぶやく思考が、もはや主婦と同次元などとは思いもよらない。本人の意思とは無関係に、佐助は着実に主夫としての経験値を積んでいた。
ふたたび居間に戻ると、幸村はなんとか後始末を終えていた。
「終わったら脱いで、これに着替える!」
「しょ、承知した…!」
佐助のつきだした着替えに大真面目にうなずき、汚れた服に手をかけた幸村は、そこではっと動きを止めた。
視線が一点に注がれる。
「佐助。そ、その手にあるのはもしや…!?」
「これは着替え終わってから。もー今回だけだからね、次に落としたらおあずけ!!」
途中で台所に寄ってきた佐助の左手には、未開封のプリンと皿とスプーン。めざとく見つけた幸村は、満面の笑みで佐助を誉め称えた。
「さすがは佐助。日の本一の忍!!」
「はいはい、お誉めに預かり恐悦至極ーってな。いいから旦那はとっとと着替える!!」
揚々着替えはじめた幸村をまえに、佐助は複雑なため息を吐いた。
‥‥‥オワル。
幸村さん中学生くらい。とあるおやつタイムの事件。
一部ノンフィクションでお送りしました。(・∀・)ノ