そのまま妄想に逃避した結果↓
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佐助少年と幼年幸村が脳裏から消えてくれません。
ふたりの年齢差っていくつかなぁ。最低でも五歳は違っててほしい。
・・・・・・
今日は生憎の雨だった。
「参ったね、これじゃ外で稽古も出来ないよ。ねえ、旦那?」
「…………。」
ふり返れば、俺様に背を向けて座敷で黙々と遊ぶ旦那(俺様より年下だけど)。
あーあ、慣れないはじき遊びなんかして。力任せに弾くもんだから、おはじきが部屋中散らばっちゃってるじゃんか。
「旦那。力抜いて弾けば、そんなに部屋中走り回らなくて済むんだよ?」
「…………。」
昨日の唄は旦那にとって相当許しがたいものだったらしい。もー意地になっちゃって、口も利いてくれませんよ……トホホ。
なんてやってたら、たくましく廊下を歩く音がして、お館様が現われた。あわてて礼を取る俺様。
「おう、佐助……ん? どうした幸村。何故佐助に背を向けておる?」
「お、お館さまっ?!」
おはじきに夢中だった旦那は、現われた大将に跳ねるようにして驚いた。
慌ただしく頭を下げて、俺を横目でちらりと見てくる。
おーおー、睨んでる睨んでる!
「どうした。共に遊ばぬのには何か理由があるのか?」
「そ、それは佐助が!」
「うむ?」
「佐助がっ……それがしにっ……はれんちな歌を……教えようと、するのでござる……」
一旦は勢いよく上げた顔を、説明しながらもどんどん伏せていく旦那。
あーもー…なんだかねえ。
「あのねえ、マセてるのは旦那のほうでしょーが。だいたい、あの歌はかくれんぼして楽しく遊んで家帰って人間は幸せって歌なんだから、どこにも破廉恥な要素なんかないんです」
「そ、そう……なのか?」
「そーです。あれはあーいう子ども向けの歌なんです」
「う…。」
みるみる赤くなっていく旦那。失態と感じたのか、早とちりが恥ずかしくなったのか。
とりあえずお館様はそんな旦那を微笑ましく感じたようだった。
「よくわからぬが誤解は解けたようじゃな、幸村、佐助」
「はっ!」
「お館さま……も、申し訳ございませぬ」
「何、気にするな。今日はそのまま仲良く遊び、明日はまたしっかり修練に励め!」
「ははっ!! この幸村は必ずや、佐助とともにお館さまのお役に立てる武将となりまするっ!!」
◇
「さぁすけぇぃッ」
「ぉわっと?! 何、どうしたの旦那」
任務も一段落、木陰で休んでたところを渾身の大声で呼ばれたもんだから驚くのなんのって。
これ俺様じゃなかったら落ちてるよ、旦那。
「気合いが足りぬぞ佐助! 何をらしくもなく腑抜けた顔をしておったのだ」
「あー…いや、ちょっと昔を思い出してさ。子ども向けの歌を破廉恥って怒ってた旦那が、未だに前田の風来坊にからかわれて真っ赤になってるのがもー俺様微笑ましくって」
「なっ!?」
やー…ほんと、あのときはどう成長するかと思ったけど、見事にあのまんま育ってくれちゃって。
俺様、旦那のこれからが楽しみ……な反面、ちょっと心配かも。
終。