昔の書きかけをひっぱりだして改変してみた。2当時、これも全四話で元親夢になる予定でした。たしか状況しっくりこなくて放置した覚えが…。
3そっくりの構図だったので、プロローグ小田原に捏造。伊達所属主人公です。例のごとく絡みはあまりありません…。
【 死 地 】
・not 夢
・戦の一幕
・仮名「祐(たすく)」
戦女は、ただ奮うのみ。
悔しさに噛んだ唇は
血と汗と泥と、
恥辱の苦い味がした。
【 死 地 】
あちらこちらで煙る血と硝煙、心奮わされる剣戟の音。
初めて戦に出たのはいつだったろう。あの頃たしかに恐怖は感じていたはずなのに、度重なる戦場の記憶に霞んでしまった。胸を悪くする血臭にも慣れ、人を斬るごとに心身ともに兵(つわもの)になっていく。
志。ただそれだけが、この心の求める先。
けれど、今回の戦は少し──否、だいぶ様相が違う。身を震わせる冷たい予感が私を焦らせる。敵の動きが妙だ。様子がおかしい。なにかが起きている。一刻も早く、主君のもとへ急がなくては。
馬を駆る、走る。
疾る。
(見えた!)
「政宗様! 小十郎様!!」
そして、あるじの元へ隊を率いて馳せ参じた私は凄絶なさまを見る。誰よりも強いと信じていた、人生の師の膝をついた姿とともに。
「あれは……祐!?」
「来るんじゃねぇ!」
お二方が対峙していた男は間違いなく強い。そして、速い。あの立居姿と刀は居合の使い手だ。
師を見る。見交わす一瞬、唇を固く結んだ小十郎様の目は告げる。『政宗様を逃がす。』
異論なんてあるはずもない。果たすべき役目を心得て、うなずいた。
戦場では、力劣る女であることは関係ない。ここに安易な性差はない、武器を持ち戦場に立つならば皆おなじ兵力。条理。いまさら死ごときで慄く覚悟でもない。
そうだ、かまわない。
「これより政宗様を援護し、撤退する! 私は隊を離れ前線へ出る、おまえたちは小十郎様とともに政宗様を全力でお守りせよ!!」
「は!」
守ると決めた。小十郎様の策が成るように。
死なないと誓った。政宗様が諦めない限りは。
純粋な力ではどうしても男に劣る私が、伊達家臣団で誰より優るのは速さ。その唯一、今ここで──奮う。
「小十郎様! あなた様のお役目をどうぞ!!」
叫び、速さをゆるめ馬の首を返す。この子はお二方の脚に残す。
嘶いて身をよじる馬の背から飛び降り、みずからの足で地を蹴る。走る。
「見誤るんじゃねぇぞ、祐!!」
「しかと心に!」
背にお声を聞く。ぼろぼろだったお姿。けれども小十郎様は立たれる、政宗様を生かすために。疑わない私は振り返らない。隊の者もみな死力を尽くしてお二人を援護するだろう。
──小十郎様。師の貴方様には到底およびませんが、政宗様の盾となる役、謹んでお受け致します。
走る、走る。この足はためらわない。倒れている主君の脇を走り、過ぎる。
「政宗様、どうぞご無事で」
「祐、テメェ……なんのつもりだ!」
「政宗様、お退きください! 祐が時を稼ぐ間に!!」
「小十郎…っお前の指示か!!?」
「我が軍随一の速さとて長くは保ちません! 祐を死なせぬためにもお早く!!」
走り抜けた背後に、問答が聞こえた気がしたが錯覚かもしれない。政宗様は戦場での撤退を良しとしない、とても負けず嫌いの御方だけれど、状況を読めぬほど暗君ではない。
「祐!!」
声が走る私の背を押す。
「おまえの命はこの独眼竜のモンだ、勝手に死ぬことは赦さねぇ! 生きろ…ッいいな?!」
「仰せのままに!」
政宗様。
おのれに厳しく民に優しく、誰よりも情け深い独眼竜。どうぞ無事に御戻り下さい。
小十郎様、……政宗様。
御約束致します。
祐は身命を賭し、政宗様の時を担いましょう。あの男を留めてご覧にいれましょう。
いかに敵わずとも赦さじ。
だから、生きて。
どうか。
「──此度の伊達の戦はこれにて終い。あなた様に政宗様は殺させません。」
対峙したその気配。異様なまでに静かだが、険がある。瞬きほどの気のゆるみも許されない緊迫。
男の右腕が動く。
閃いた白刃。刹那の間にするどく迫りくる一陣の風は、男の速さ。加速の勢いそのままに地を疾る。激しいかまいたちとなって。
牽制程度の一撃、だが主君らを沈めた技量の相手だ。真っ向から刃を合わせれば私が不利とわかっていた。
相手の抜刀を認めた瞬間に鞘を走らせ、私もおなじく何陣かの風を生んで低い体勢で駆ける。
(──数の斬撃で、あの一撃を捩じ伏せる!!)
幸いにも読みは当たる。互いのかまいたちは、相殺し合った。
細身の、白銀の薄幸そうな男は細い目でこちらを睨んだ。ま直ぐにかち合った目。曇りなく、射すくめるように敵を見据える目、それがこの男の強さなのだろう。
ためらいなく邁進してきた強者の技だ、呑まれてはならない。劣ってはならない。食らいついてみせる。
決意を飲み下す私に、薄い唇が低く言葉を紡いだ。
「秀吉様に仇なす者を逃がす……貴様も秀吉様の敵か。」
「否。敵は主君を害するあなた様──私のすべてを賭しても、止める。」
必ずやこの男、撒いてみせる。──全力で。
・・・・・・
そして冒頭へ。
動きっぱなしの話を久しぶりに書いた。疾走感や緊張感が出てるといいなあ…。
嬉しいです、拙作で右目好き壱衣さんのテンションが上がってくださったなら本望なり!
体重10kgも減ったら、あなたガリガリじゃないですか…(´・ω・`)なんという効果。いずれそんなダイエッターに喜ばれる書き手になりたい!
いつも偏愛豊臣勢ばかりお目にかけてすまない…。また右目も書きたいです。読んでくださりありがとうございます。
ちなみに後ルートは未定。見立てでは伊達主従or豊臣勢ですが、大穴は権現さまENDです(笑)
『死地』の緊張感に体重10キロは減ったね(`・ω・´)キリッ
各務さんの小説は地デジ並みに美麗画像でぬるぬる動くから毎度にやつきつつ読ませて貰ってるよん(^w^)こじゅがかっこいい。こじゅが全力でやくざである。こじゅが政宗様を好きすぎて辛い。こじゅがヒロインの師とか何て俺得。寧ろヒロイン=俺おk←(※ノット夢)
えと…この後石田ルートですか?(こいつ少し黙らせて)
……(((´・ω・`)))
読み返したらコメントが荒らしっぽくてしにたくなった。ごめんね|( ̄3 ̄)|
しかも「かっこいい」をいただけるなんて! いつも本当に嬉しい反応ありがとうございます女神さま!(´ω`*人)
恋のコの字も見えない話だけど、書いてよかった。お言葉を励みに、まだまだ精進していきます!
どっぷりと世界観に飲み込まれて一気に読んでしまった…!緊張感もスピード感も出てるよ!やっぱり各務ちゃんのお話し好きだわ><