断られるかと思ったけど、意外に快くついて来てくれてホッとしている。偶然街で見かけたミラを、お茶に誘った。夏合宿以来、初めてになる再会だった。
「まさかつばめ先輩に声をかけてもらえるなんて思わなかったです」
「アタシもミラが来てくれるとは思わなかったよ」
あの夏合宿の後、ミラは青女のサークルを辞めた。青女のみんなはミキサーの前に座らなくても籍は残してていいって言ってたみたいだけど、ミラなりのけじめだったんだと思う。
班長としてアタシの力不足もあったし、合宿での件については青女に行って3年生の先輩とも話をさせてもらった。ヒビキサンも紗希サンもアタシを労ってくれたけど、やっぱり、どこかすっきりしなくて。
「関さん、原稿出来てる!? あと、表紙データ!」
「一気に言わないでよお」
文化部の勝負所は春と秋に1回ずつ。今は春にある文化会発表会に向けてどこの部活もバタバタしている。もちろん、出版部も例外になく。ただ、出版部の場合は当日の発表と言うよりはそれまでがピーク。
毎年出版部が担当することになっているのは文化会発表会の冊子と、部活紹介の冊子。それが刷り上がってしまえば時間的に余裕が生まれる。他の部との違いはこれかもしれない。
部室では相変わらず大橋クンがわあわあと忙しそうにしている。一応前部長で、文化会の幹部でもなくなったはずなんだけど。出版部では部長より強い立場の編集長、それになっちゃったモンだから。