『サドニナの評価ってどうなんですかねこーたせんぱ〜い』
「どうもこうも、数字の通りじゃないですか」
『ふえ〜ん!』
パソコンのスピーカーから、つんざくような泣き声。もちろんそれは泣き真似で、泣かれたからと言って私にはどうすることも出来ないんですけど。サドニナとのネット通話は突然に。
サドニナは歌って踊れるアイドル声優を目指しているらしく、現在は主にネット上で歌の動画をアップしたり有志のインディーズ作品でネット声優みたいなことをしたりして活動をしているようです。
ただ、サドニナ本人が思うような評価がなかなかもらえないようで、こうして私の顔を見る度に泣きつかれる始末。懐かれたのは最初にまともなモニターをした所為ですね、ひょっとしなくても。
「やあ、奇遇だね」
「圭斗じゃないか」
今日は向島大学の健康診断の日で、新4年生が集まっている。どこから回るかは個人の自由だけど、視力検査から回る人が多いようだ。実家に戻っていた菜月さんもこっちに戻ってきた様子。
視力検査には長い列が出来ていた。その場の流れで僕は菜月さんと一緒にその長い列を構成する一人になっていた。検査自体よりも待ち時間の方が圧倒的に長いこの検査は、積もる話をするのにちょうどいい。