手乗り文鳥っていうのは、幼い頃から人間を怖がらずに育った文鳥のことを言うらしい。まだしっかりと目が見えていないヒナを親鳥から引き取ってエサを与えると、文鳥は人間を親と思いこんで信頼してくれるようになるとか。
俺の目の前でチュンチュンと声を発しながら、手の上に文鳥を乗せている水鈴の幸せそうな顔と言ったら。ただ、ここは光洋エリアだ。向島じゃなく、光洋エリア。向島から東に240キロ。そんな距離をはるばる来たのだ、文鳥カフェのためだけに。
大体、家で文鳥のピー子ちゃんを飼ってるんだから、わざわざそれをカフェに求めることもないだろうと思う。あと、何でそれに俺が付き合わなきゃいけないんだ。いや、確かに俺は地元だけど。いつかの土産で文鳥まんじゅうを買って来なかったのを根に持ってるのか。
「ん、いいね。菜月さんナイス」
「手を抜いた序盤がここで生きたな」
目の前で交わされる菜月先輩と圭斗先輩のハイタッチ。実に素晴らしい光景だ。今日は3年生追いコンということで、第1回MMPボウリング大会が開催されている。しかしこれは決して3年生に花を持たせる接待ボウリングなんかじゃない。強いて言うならムライズムからのラブ&ピースというヤツだ!
一応、1・2年生チーム対3年生チームという体でゲームは進んでいる。各学年2枠ずつ枠をとっているので1ゲームで実質20フレーム。第1ゲームは一応俺たち1・2年チームが空気を読まずに勝利したんだ。いや、接待ボウリングじゃないから勝ってもいいんだけども。