公式学年+1年
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緑ヶ丘大学のセンタービル、どのど真ん中に設置されているガラス張りの建物。それは、社会学部メディア文化学科佐藤ゼミの構える体験型実習施設であるラジオブース。昼休みにはここからフロア一帯と中庭に向けて番組を放送している。
さて、3年になるにあたって本格的なカレンダーも打ち出されてきた。ゼミのラジオブースは主に3年生が担当することになっている。大学祭が過ぎた頃からは2年生からも何人かが選抜されて、お試し番組をやったりしていた。
何かがある度に俺は先生から名指しで仕事を請け負わされるハメになったり、フィールドワークで雨に降られたり。疫病神とまで言われる始末だけど、このゼミラジオに関してだけは、名前を呼ばれたのは災いではなく幸い。
慧梨夏サンの車が駐車場にスーッとやってきて、そのままアイドリングしている。ただ、慧梨夏サン本人はまだ体育館にいて、運転しているのは慧梨夏サン本人ではないことが分かる。
「じゃ、うちお迎え来たんでお疲れでーす」
「お疲れ様っす」
慧梨夏サンの背中が遠くなると、それまでは大人しくしていた三浦が一気にうるさくなる。ちょこまかと何かを覗き込むような。実際、慧梨夏サンの車を覗き込んでいる。
「おお〜っ、あれが慧梨夏さんのかれぴっぴさんですね!」
「お前見たことなかったか」
「見たことがあったとしても覚えてないよね! は〜、やっぱかわいい顔してるっすねー」