Maniacer's Spiral (R)

「神様、仏様」

　菜月さまーと全員分の声が揃う。俺たち全員が向いてる方角は北、厳密には北北西くらいだろうか。そっちに何があるのかって、緑風エリアだ。菜月先輩は緑風の西部にご実家があるとのことだから、気持ち西寄りに。

「野坂の基準なら神が圭斗先輩で仏が三井先輩。菜月先輩だけだな人としての体裁を保ってンの」
「圭斗先輩が神なのはともかく三井先輩が仏って」
「野坂さん、大草原になってますよ」
「神さま仏さまーって同列に扱うんもありえんみたいなコトやろ。ノサカの顔見とったらわかるよ」

「し、しんどい…！　お前いつもこんなことやってんのか」
「えっ？　だって稼ぎ時だもん。朝霞がいつもやってる仕事とはやっぱ違うかな」

　俺は日雇いの派遣会社に登録してるんだけど、年が明けてからは大石がバイトをしている倉庫に派遣されることが多かった。今までは製品の吊り札付けの作業をしてた。それが一段落ついてからは製品の出荷作業に回るようになった。
　それと言うのも、吊り札付けの作業が一段落するかしないかという頃のこと。会社の主任さんから「男の子、いいかな」と呼ばれて右も左もわからぬままに放り出された出荷作業の現場。