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【SSS】catabolism and anabolism

「やあ、奇遇だね」
「圭斗じゃないか」

 今日は向島大学の健康診断の日で、新4年生が集まっている。どこから回るかは個人の自由だけど、視力検査から回る人が多いようだ。実家に戻っていた菜月さんもこっちに戻ってきた様子。
 視力検査には長い列が出来ていた。その場の流れで僕は菜月さんと一緒にその長い列を構成する一人になっていた。検査自体よりも待ち時間の方が圧倒的に長いこの検査は、積もる話をするのにちょうどいい。


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【SSS】丁重な、挨拶代わりの

 表示されているのは、知らない電話番号。非通知ではない。無視をしたくてしているワケではないんだけど、8回コールで切れるのを3回繰り返して、現在4回目。どこまで粘るのか、見てみたいという好奇心が勝っている。
 まあ、知らない番号からの電話には出ない方が後々面倒なことにはならないだろうし、このまま出なくたって別に全く問題はないんだ。ただ、ガチな間違い電話だったらどうすりゃいいんだとも思うけど。いや、それなら留守電にメッセージ残してくれたって。
 相変わらず電話は鳴り続けている。8回コールは5回目に突入している。まあ、間違い電話だったにしてもそろそろ間違いであることに気付かせてやった方がいいかもしれない。緊急連絡かもしれないし。業者だったり詐欺集団だったらどうするとも思うけど。ええい、賭けだ。


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【SSS】怨念がおんねん

「うっうっうっうっ……」
「おはようございまー……って、さと先輩どーしたんですか?」
「うっうっ……ユキちゃん、うたちゃんが〜」
「うたちゃんて、さと先輩にちっとも似てない美人でしっかりさんで秀才の妹さんですよね? そのうたちゃんがどうしたんですか?」

 沙都子はさっきから誰彼構わず泣きついてこの様子。ボクや啓子はこないだからこんな調子の沙都子に付き合ってるんだけど、どうやら1年生にも矛先が向いた様子。ユキちゃんは慣れないからわたわたと慌てている。


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【SSS】闇を掬う

 時刻は夜の11時半過ぎ。4フロア分の階段を登り切って見える高架には、発車した電車が滑るように加速していく。これが終電か、精々あと1本というところだろう。目の前の部屋のインターホンを短く2回鳴らし、相手の出方を待つ。
 春とは言え、夜はまだ冷える。それに、見た目からして女の住人が多そうなピンクの外壁。そんなところであまり長い間待たされたくはない。ただ、俺の部屋からも決して近いとは言い切れないその場所に、のこのことやってきた俺も俺だ。

「あ」
「おう」
「ホントに来たんだ」
「てめェが来いっつったんだろ」
「……まあ」


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【SSS】1人の部屋と2人の空間

 4年に上がるのを機に伊東は部屋を引き払って実家に戻った。それは伊東家の掟じゃないけど、教育方針とかそんなようなことで。通えない距離ではないし、4年にもなれば授業も少ない。必ずしも1人暮らしをしていなければならない理由はない。
 ――というわけで、宮林サンの部屋でなければ俺の部屋に転がり込むことも増える。バイトの前後だとか、何でもない時でも。それで人のクッションに全身を投げ出すのだ。いくら全身投げ出せるクッションとは言え、好き勝手し過ぎだ。

「っくしょい! へーっくしょい! あ〜……浅浦、ティッシュ」
「ほら」


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