窓の外は物凄い雨だ。風も強いから台風の影響なのだろう。

 久しぶりの雨の日の午後、お気に入りのミリー・ヴァーノンを聴きながら車を走らせた。とにかくどしゃ降り。ワイパーも利かない。窓は白くくもっている。なぜこんな日に出掛けなくちゃならないのかと思ったが、立ち寄ったコンビニで親切なお姉さんに出会った。
 私が買い物を済ませ、ドアを開けて車のところへ行こうとしたら、そのお姉さんがずっと傘を挿しててくださっていたのだ。
 私は杖をついているから傘は持てないので、雨の日は(私の中で)最大の早さで歩くようにして車に乗り込む。今日もそうしているつもりだったが、そのお姉さんはコンビニの入口からずっと挿していてくれていたのである。
 私に傘を向けているせいでお姉さんはずぶ濡れになっていた。私が「大丈夫です!すみません。大丈夫ですからありがとうございます!本当にありがとうございます」と申し訳ない思いで言うと「車はどれですか?そこまで行きましょう」と笑顔で仰るのだ。車はすぐ近くだったのが幸い。あのお姉さんが風邪をひいていないか、ちょっと心配。
 見ず知らずの他者(ひと)の優しさに触れて、帰り道は窓を伝う雨のせいだったのか、或いは私の涙のせいだったのか、前がよく見えなかった。